[最終更新日]2023年9月12日  [記事公開日]2022年9月8日

大卒の就職難に関する問題|実際の内定率から見る大学側の政策と対策

厚生労働省によって公表された新卒内定の取り消し状況について、マスコミを中心に新型コロナウイルスの感染拡大の影響だと指摘されました。確かにそういう面もあるかもしれませんが、それがすべての理由なのでしょうか。また、そもそも大卒者の就職難自体、それほど深刻な状況を迎えているのでしょうか。

大卒の就職内定率

大卒の就職内定率

2022年5月、文部科学省は「令和3年度学校基本調査」を発表しました。これによると、令和4年(2022年)3月に大学を卒業した者に占める就職者の割合は,74.2%(前年度より3.5ポイント低下)でした。確かにこれを見ると一見、大学の卒業者のうち25.8%は就職しておらず、あたかも就職難に陥っているかのように見えるかもしれません。

ただし、この25.8%には、大学院などへ進学した人や、一般企業への就職とは異なる道を選んだ人も含まれています。語学などスキルの習得のために海外へ渡航した人、スポーツや芸術といった分野で夢を追っている人など、自らの意志で就職しない決断を下した人です。大学生が本当に就職難なのかどうか見極めるには、就職を希望している卒業生が、実際に就職できているのかどうかを見なければなりません。

それを見ることができるのが、文部科学省と厚生労働省が共同で行っている「大学等卒業者の就職状況調査」です。これによると令和4年(2022年)3月に大学を卒業した者のうち、就職希望者に対する就職者の割合は95.8%でした(令和4年3月大学等卒業者の就職状況(4月1日現在))。この就職率は、パンデミック前の98.0%に比べれば少し低い数字ではありますが、実はリーマンショックによる就職難が始まる前とほぼ同じ水準です。

大学卒業者の就職状況推移(令和4年3月大学等卒業者の就職状況(4月1日現在)より抜粋)

つまりこのコロナ禍での不景気の状況下ですら、それだけ高い就職率を維持しているのです。そう考えると、コロナ禍によって大卒者の就職難が深刻化しているとは言われつつも、実際は「就職難」と呼ばれるほどの状況ではないことがわかります。

就職難と言われる理由と真相

就職難と言われる理由と真相

最近よく大卒者の就職難と言われますが、実際は就職難と言われるほど深刻な状況ではないことがわかりました。では、なぜ大学を卒業しても就職が難しいと言われるようになったかというと、やはりコロナ禍に対する懸念が大きいからでしょう。

確かに、新型コロナウイルスの感染がちょうど拡大していった2020年から2021年にかけては、各業界が大きな影響を受け、実際、一部の業種では求人を著しく制限したところもありました。航空業では全面的に新卒採用を取りやめましたし、宿泊・観光・旅行・飲食といった対人業種の業界も、求人が激減したのは事実です。内定が決まっていたにもかかわらず、やむを得ないということで取り消しを行った企業も少なくありません。

しかし、2022年になって状況は改善しつつあります。厳しい状況だった業界も多少求人を再開しつつあるほか、コロナ禍で大きな打撃を受けなかった業界では、パンデミック前より求人を増やしている企業もあるからです。新卒の内定取り消しに関しても、昨年度はほとんど報告されていません。

また、もっと長いスパンで見ると、大学生の就職状況は決して悪くなどなっていません。かつて就職氷河期と言われる就職難の時代がありましたが、そのころと比べると大学生の就職がそこまで難しかったことは21世紀以降ないです。

確かに、2008年の金融危機によって一時就職率が急落したことはありました。前年と比べて10ポイント近い低下を示したわけです。おそらくそれが「大学を卒業しても就職できない人が増えた」とのイメージが広まった原因でしょう。しかし金融危機から脱却した後は、少子化の影響から内定率も就職率も上昇傾向が続いており、少なくともコロナ禍を迎えるまでは、むしろ売り手市場だったのです。

それがコロナ禍でやや就職率が下がったからといって、到底「就職難」と騒ぐほどの深刻な状況ではありません。コロナ禍によって大幅に求人を減らした業界がある中でも、リーマンショック前による就職難以前の高水準を維持しています。そう考えると、確かにパンデミック前よりは難しくなっていますが、世間のイメージほど状況は悪くないはずです。

大卒の就職難を乗り越え、学生の内定率を上げる方法

学生の内定率を上げる方法

世間で言われているほど、大卒者の就職が困難になっているわけではありません。それは、これまで見てきたことからもわかるはずです。しかし、コロナ禍のように誰も予期しなかった事態が突発的に起こることも事実としてあることは、しっかり認識しておくべきでしょう。そういう事態を迎えると、一時的に就職が難しくなることも大いにあり得ます。

大切なのは、そういう突発的な事態に際しても、狼狽せずに自分のキャリアをしっかり考えられる若者を育むことではないでしょうか。そのためには、大学側も従来の就職支援以上に根本的な対策を講じる必要があります。

今では、ほとんどの大学がキャリア支援センターなどの施設を設けて、学生の就職活動を支援しています。しかし、現状は自校の就職実績を上げるための就職先の紹介程度ではないでしょうか。その場合、求人数自体が減少すると、それに伴い就職できる学生の数も減ってしまいます。

では、学生がどんな状況でも乗り越え、内定を勝ち取る力をつけるために大学側は何をすべきなのでしょうか。第一に考えたいのは、早期におけるキャリア教育のスタートです。

近年、企業は有望な人材を獲得しようと、新卒採用でも候補者の多様なスキルを見極めるためのさまざまな試みを行っています。エントリーシートやインターンシップでも、多面的な自己分析ができる人が評価されるような仕組みに変わりつつあるのです。大学は、どのような状況にも対応できるように、学生のスキルを多面的に伸ばせるような機会を与えるべきでしょう。

早期からのキャリア教育に力を入れている大学の一つが、日本大学です。日本大学では、入学時に早くも仕事をテーマにしたガイダンスを実施するともに、1~2年次の段階からキャリアガイダンスやインターンシップガイダンスなど多様なプログラムを提供しています。また、就職支援に専任のスタッフを約70名も配置するなど、全学での支援体制が強力なことも特徴です。日本一のマンモス大学ゆえということも言えますが、規模や学生数にかかわらず全国の大学が参考にすべき取り組みではないでしょうか。

まとめ

大卒の就職難とは言われますが、実際の内定率を見る限り、そこまで深刻な状況とは断定できません。確かにコロナ禍の影響はありますが、2022年現在、状況は改善されつつあります。しかし、どんな状況でも希望するキャリアを選択できる能力を学生に身につけてもらうために、大学側もしっかり対策を取るべきでしょう。

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