[最終更新日]2023年9月12日 [記事公開日]2022年9月21日
学生の就職率を上げたい!大学がすべき学生支援とキャリア教育
大学において、学生の就職率の低さに悩んでいませんか。この記事では、大学生の就職率と内定事情、企業への内定率の高い学生の特徴、就職率を上げるための支援と準備について解説しています。学生の就職率を上げたい就活担当者はぜひご覧ください。
学生の就職率と内定事情について
文部科学省が令和4年3月に発表した「令和3年度大学・短期大学・高等専門学校及び専修学校卒業予定者の就職内定状況調査(令和4年2月1日現在)」によると、大学の就職希望率は77.5%だったのに対し、就職内定率は89.7%でした。
短期大学では、就職希望率は82.5%に対し就職内定率は86.9%、高等専門学校では就職希望率54.8%に対し就職内定率が94.1%という結果が出ています。
令和3年4月新卒入社組のデータと照らし合わせると、令和4年4月新卒入社組の就職内定率は0.2%の上昇で、ほぼ横ばい状態です。
また、就職内定率に至っては、大学卒よりも高等専門学校卒の結果の方が高いこともわかります。高等専門学校生の場合、大学への編入が可能です。そのため、就職希望者が少ないとみられています。しかし、中学卒業後から5年間専門的な教育を受けてきた学生なので、専門性の高い求人とのマッチングが高く、内定率に反映されているといえるでしょう。また、年齢的な将来性も相まって、高等専門学校卒業生の就職内定率が高くなったと受け止められます。
就職内定率が高い傾向にあるのは、新卒採用の現場が「売り手市場」ということが挙げられます。つまり、企業の採用数が多いのに対し、就職希望者が少ない状況にあるといえるでしょう。
学生のキャリア志向が高くなり、自己のスキルを活かせる企業へエントリーする傾向にあります。企業はポテンシャル重視など、年齢や学歴を考慮しながら採用することが多く、学生と志望する企業とのマッチング率が高くなったことも踏まえるべきです。その結果、高い就職内定率が年々維持されていると考えられます。
就職率の高い学生の特徴
早い段階で就職を決める確率が高い学生には、どのような特徴があるのでしょうか。また、就職率の高い大学の特徴などを取り上げました。
就職率の高い大学の特徴
就職率の高い大学の特徴として以下の項目が挙げられます。
就職支援プログラムの導入
学年ごとに実施する総合適性検査の導入
企業出身者の教員による就職アドバイス
1年次から就職に向けた教育を実施
工学系の大学では、就職先となる業界がある程度決まっています。そのため、就業に関する学生自身の能力を、客観的に把握できる就職支援プログラムを提供しています。プログラムの一環として、自身の就業力について理解できるワークを導入し、目標設定をすることや能力向上のための計画的な支援なども取り入れています。 また、学外で就業することも「正規授業」として取り入れていることも特徴的です。企業で働いたことで単位とみなす「コーオプ教育」も取り入れ、働くことも学びととらえる教育を行います。
また、自分の強みや弱みを把握できるコンピテンシー診断などを交えた総合適性検査を学年ごとに行い、自己分析を促すと同時に、就業に向けた意識付けを行っています。
とくに人文系大学の就業率を上げたい場合には、卒業後を見据えた長期的な視点が効果が高いと言われています。コンピテンシー診断をもとに思考や行動特性をあぶりだし、企業人として求められる人物像に近づくには、どんなことを補うべきかを追求する教育を行います。
卒業後の進路も「どんな業界や職種に適性があるのか」が浮き彫りになるため、就職活動のスタートダッシュがかなえられる学生が育ちます。
そして、企業出身者である教員が「進路アドバイザー」として、自身の就活や勤務経験をもとに学生へアドバイスを送る大学も存在します。各学科それぞれに進路アドバイザーの教員が在籍しているので、履修内容に応じた進路の構築や就活に向けた準備を促せるでしょう。
職歴を持った教員の在籍を強みに、企業との関係強化も図っています。職員に選任の企業訪問担当者を設け、大学の学生を売り込むことも同時に行います。
就職に力を入れている大学の多くは、1年次から段階的に就活に向けた教育を取り入れています。また、資格取得やTOEICなどの語学力を示す検定受験も促し、就活に強みを持たせる教育も行っています。人材育成もカリキュラムに組み込むことで、「ポテンシャル採用」だけにとらわれない魅力あふれた人材を育てられます。
良い企業へ就職を決める学生の特徴
良い企業へ就職を決める学生の特徴をまとめます。
就活情報に高くアンテナを張る
TOEICスコアなど積極的な資格取得
入念な就活スケジュールの構築
地方にも視野を向ける就活をする
良い企業から採用内定を受ける学生は、普段から就活情報を収集しています。2学年次ころからタレントプールへの登録を積極的に行い、気になった企業へインターンシップを申し込むなど、自分の売り込みも怠りません。
また、第一志望の企業には早い段階でエントリーシートを送れるよう、募集要項やエントリーシートの入手方法なども事前にリサーチしています。企業公式SNSなどから発信される採用情報などを、逐次受け取れる環境を作っているのも大きな特徴です。情報収集とともに、企業分析や自分の適性などをしっかり見据えた進路決定を行います。
また、大手企業では公用語を英語に定めていることもあります。そのため、採用条件で語学力の最低ラインが定められている場合もあるでしょう。語学力の物差しとなるのが「TOEICスコア」です。企業によってエントリーシートの提出とともに、スコア提出を求められることもあるので、積極的にスコアを伸ばした学生は高く評価されます。
一般的には「TOEICスコア600点(実用英語検定試験2級相当)」の取得が目標とされています。しかし、このスコアが大企業では最低限のラインだととらえるべきです。また、企業によっては、昇進の条件としてTOEICスコアを求めます。キャリア構築の観点から、学生のうちにスコアを伸ばしておけば、「向上心がある」と認めてもらいやすくなります。
そのほかにも、国家試験などを積極的に受験する学生も注目されます。業種によっては有資格者の立ち合いがなければできない業務も存在します。企業としては、有資格者の存在を求めているため、経験の有無よりもまずは資格の取得を優先させましょう。
就活は、一社でも多くの企業を受けることが推奨されています。そのため、自分が働きたい業界や業種、職種などを絞ったのちに、採用条件に合う企業をピックアップすることが第一段階です。このとき、企業の採用スケジュールをしっかり確認し、すり合わせを行った学生は、自分が第一志望とする企業に入社が決まりやすいです。 このような学生は、入念な就活スケジュールを組むとともに、時間があれば2次募集・3次募集を提示した企業のチェックも同時進行で行っています。スケジュール上、結果待ちの企業やエントリー情報が把握できていれば、選考落ちてしまった場合でも、次の選考へ気持ちを切り替えられるメリットがあります。
大手企業は東京など首都圏に本社を置くため、「東京での就職、大手企業への就職」に固執する学生も見られます。しかし、地方にも大企業は数多く存在します。○地域密着型の企業や、海外貿易の理由から地方に拠点を置く企業なども存在するため、地方に視野を広げると就活の幅が大きく広がります。良い企業へ入社を決める学生は、就活に対する視野が広いこともポイントです。
学生はIターンやUターンなどの選択を迫られますが、地方企業ならではの好待遇も見込めるため、地方での就職を試みる学生も多く見られます。
学生の就職率を上げるための支援と準備
大学生や高等専門学校生の場合、卒業後に就職を希望した学生のすべての進路が達成できるように後押しすることが、学校の役割の一つです。
学校側の対策
学生の就職率を上げるための支援と準備として、さまざまな項目が考えられます。
就職支援にチューターを置く
インターンシップへの参加を単位に含めるカリキュラム
企業が運営するサイトの紹介
就職合宿などを開催する
就職支援センターなどに、学生の身近な存在となるチューターを配置することは、大きな支援となります。教員などが務めることも良いでしょうし、就職支援を行う企業など外部から担当者を招くことも一案です。
チューターが存在することで、学校側からの就職関連情報の発信や学生からの相談に柔軟に対応できるようになります。
学校のカリキュラムに、「コーオプ教育」を取り入れることも一案です。コーオプ教育は、授業の一環として企業へ就労する教育を指します。大学主導で学生の事前教育などを行い、学生は提携先の企業で一定期間勤務します。学生は対価としての賃金を得ながら、働くことの大切さや、企業の雰囲気、働き方などを学べます。企業は学生へ対価を支払うため、実践的な業務を与えやすくなるのも特徴です。そしてコーオプ教育は、履修単位の対象となります。
また、コーオプ教育以外にも、学生が企業のインターンシップ制度を利用して働き方を学んだ場合、履修単位の対象とする学校もあります。履修単位とみなすことで、学生が安心した進路の検討や、授業日数を気にせず就活に励めるメリットが得られます。
就職活動について、学校側での就職情報の提供だけでは、限りがあります。学生主導で就活が進められるよう促すためにも、企業が運営する就活関連サイトを紹介することも、支援の一つとなるでしょう。就活支援ポータルサイトのほか、新卒の就活生でも登録できる就職サイトなどが、その代表例となります。また、タレントプールと呼ばれる、就活生や大学1~2年の学生へ向けたエントリーサイトの紹介なども一考すべきです。
就活の一環として、就職を希望する学生を対象に、就職合宿やオリエンテーションを行う大学もあります。この集まりでは、ビジネスマナーに関する講義や実践を行うほか、就職活動が終わった4年生を交え、就活のコツなどを講義してもらう時間を作ります。この他にも、実際に企業で働く卒業生から話を聞くことも支援の一つとなるでしょう。
学生側の対策
学生自身の就職率を上げる対策も必要です。
取得資格も単位に組み込む
企業に向けた大学の特色等をアピールする
産学官連携事業を検討する
コンピテンシー診断などを全学生に提供
TOEICスコアに基準を設け、基準以上のスコア取得者には履修単位を付与することも就職支援につながります。自身の語学力の把握と学力向上など、学生にとってもメリットが得られるので、よい支援になりやすい傾向にあります。また、在籍学部の履修条件によって、受験資格が得られる資格制度もあります。国家資格を取得できたら履修単位を付与することで、採用に有利になる資格取得を促すこともできるでしょう。
就活は学生主体と言われていますが、自校の就職採用率を高めるには学校側も積極的に活動する必要があります。「学歴フィルター」のように、学校名だけでふるい分けされることを減らすには、大学の特色などを企業へアピールすることも大切です。企業に向けて大学の魅力を伝えることで、企業側も選考の幅が広がるでしょう。また、学内企業説明会の誘致を行うことも一案です。
企業アピールの一環で、大学で研究機関を持っている場合には、企業や自治体と連携をすることもよいでしょう。これを産学官連携といいます。大学側も、費用や時間、マンパワーが必要となる研究に、企業や国などが加わることで、生産性の高い研究活動ができるでしょう。
卒業後の進路を、早い段階から「自分事」として受け止めてもらうためにも、1年次からコンピテンシー診断などの自己分析を促し、段階的にデータを蓄積していくことをお勧めします。採用内定率も引き上げたいという場合に、これらのデータは必要不可欠となります。
まとめ
全体のデータでは、学生の就職内定率は高い状況にあります。しかし、学校単位でみると「就職率はおろか、内定率も低い」という状況に悩む大学も見られます。学生の意思を変える工夫や、大学側からできるアプローチの方法を積極的に実践してみましょう。もし、アプローチの方法が思いつかなければ、弊社のキャリアプランナーを活用してみてはいかがでしょうか。就職内定率の向上に向けて、二人三脚で取り組ませていただきます。
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