[最終更新日]2023年9月12日  [記事公開日]2022年9月22日

若手社員の早期退職を防ぐには?人事なら知っておきたい対策法を解説します

せっかく採用した若手社員が就業してすぐに辞めてしまう…このようなことで頭を悩ませていませんか?若手社員に辞められると、また求人を出さないといけなくなります。準備に手間がかかりますし、コストも発生します。若手の早期離職を防ぐには、なぜ彼らが辞めてしまうのか、その理由や事情を把握しましょう。その上で、人事部でできる対策について検討していきましょう。

若手社員の早期退職事情

若手社員の早期退職事情

実際のところ、若手社員の早期退職は多く発生しているのでしょうか?早期退職でよく言われているのが「7・5・3現象」です。中卒が70%、高卒50%、大卒30%が3年以内に離職すると言われています。

しかし、厚生労働省の令和2年に発表したデータによると、入社3年以内の離職率は中卒60%・高卒40%・大卒30%という結果になりました。少し前と比較すると、中卒と高卒の離職率は10ポイントほど下がっています。一方、大卒者の離職率は相変わらず30%前後の状態で推移していることがわかります。

同じく厚生労働省では、会社の規模と離職率の関係についてのデータを公表しています。その結果を見ると、規模が大きな会社であるほど、離職率は低くなることがわかっています。大企業の場合、経営が安定していて、待遇もよく、さらにオンボーディングの流れがはっきりしているので将来の不安がない、といった理由で定着しやすいのでしょう。中小企業の場合、若手社員をいかに定着させるかに重点を置くべきとも言えます。

大卒を採用する場合、3人に1人が3年以内に離職する可能性があり、規模の小さな会社はより離職リスクが高くなることを理解しておきましょう。これだけ多くの若手社員が入社してすぐに辞めてしまうのか、その理由として代表的なものがいくつかあるようです。

若手社員の早期退職の理由とは

若手社員の早期退職の理由とは

厚生労働省では「雇用動向調査結果の概況」という資料を公表しています。その中には、若手社員の離職理由に関するデータが含まれています。令和2年上半期のデータでは、「給料等収入が少なかった」という理由が14%と、最も多い結果となりました。続いて多かったのが「職場の人間関係が好ましくない」の8.7%、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」の8.0%です。その他、仕事内容に対する不満や、会社の将来性への不安も少なくありませんでした。ただし、年齢別に見てみると、退職理由には若干違いも見られるようです。

10代の場合、圧倒的に多いのが給与など収入面の不満でした。会社の将来性への不安は0.1%と非常に低いです。それが、20代前半の離職理由では若干異なってきます。他の年代と比較して特徴的なのは、「能力や個性を生かせないから」という理由が多くなる点です。企業側が、新卒の能力や個性をきちんと把握できずに採用していることがうかがえます。

20代後半になると最も多かったのが、職場の人間関係です。20代後半になると、あらかた仕事のやり方にも慣れてきます。そのような状況で、今後この会社で長くやっていけるかどうかも見えてくるでしょう。もし、職場の人間関係があまりよくなければ、「この先この会社で長く働けないかもしれない」という思いにとらわれるのかもしれません。続いて、勤務時間などの労働条件への不満や、会社の将来性への不安も多く挙げられました。仕事に慣れて、給料もそれなりにもらえる年代です。すると、ワークライフバランスや将来性が転職を検討するきっかけになるようです。

つまり、早期退職を防ぐには、職場の人間関係を良好なものにし、ワークライフバランスを意識した職場環境の整備を進めること、会社の将来性をアピールすることが重要なポイントになってきます。

10代の離職理由で多かったのが、給与などの収入面の不安でした。ならば、給与を上げれば離職が少なくなるのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、エドワード・L・デジとマーク・R・レッパーという心理学者の発見した「アンダーマイニング効果」と呼ばれる現象が働くためです。この現象は、金銭的な報酬を手に入れると、動機がお金にすり替わってしまう人間の心理を指します。そして、給与のために仕事をしているという認識になると、仕事に対する意欲が失われて、最終的には離職という行動に至ります。つまり、給与を上げれば離職率の高さが解決するわけではないのです。

若手社員の早期退職の防ぎ方

若手社員の早期退職の防ぎ方

若手社員の早期退職を防ぐには、離職原因に対応した施策を実施することが重要です。

20代前半では、能力や個性を生かせなかったという離職理由が多くを占めます。これは、採用時に原因があると考えられます。新卒者の能力や個性を理解せずに採用し、与えた業務が社員の能力とミスマッチを起こしているわけです。また、新卒者が会社や職場に対して抱いてきたイメージと実際の職場との間にギャップを感じると、仕事へのモチベーションを失ってしまいます。このような事態を回避するためには、まず会社のことを深く理解してもらえるような情報発信を心がけましょう。その上で、求職者の能力や個性を正しく把握することが、定着率のアップにつながります。

その場合、おすすめの手法がいくつかあります。一つは、データベース・リクルーティングです。具体的な内容として、まず採用候補になる優秀な人材のデータベースを作成します。優秀な人材は、タイミングが合わないと採用できない場合もありますが、データベースに登録しておけば、いざ優秀な人材が必要になった時に効率的に採用できます。能力や個性に適した人材にオファーを出せるので、自分の能力が生かせないと採用者に感じさせることもありません。データベースに入れた人材には不定期に連絡を取り合って、いつか採用するという意思をアピールすることも大事です。

リファラル採用は、近年日本でも注目されている手法です。これは、会社関係者の推薦を受けて採用する方式です。応募者から見て、社内に自分のことをよく知っている人がいるとなると、それだけでも安心材料になるでしょう。また、関係者から会社について聞くことができるので、応募者もある程度理解した上で、採用試験に参加しています。メリットとしては、会社と相性の良さそうな人がピックアップされるので、離職しにくい人の中から採用できる点があります。早期退職を防ぐには従来の採用手法に固執するのではなく、ケースバイケースで、別のアプローチで人材発掘するのも一考です。

早期離職を防ぐには、オンボーディングも有効な施策の一つと言われています。オンボーディングとは、新入社員が会社に馴染むまで、必要なサポートを提供する仕組みです。新卒社員の場合、社会人経験がないので、最初のうちは慣れないことばかりです。少しでも早く会社や仕事のやり方に慣れることは、新入社員が仕事への意欲を持つためにも大切ですし、会社にとっても利益となるでしょう。オンボーディングの具体的な手法には、いろいろな方策が考えられます。

まずは1on1です。文字通り、1対1で上司と部下がコミュニケーションをとる手法です。できるだけ頻繁にミーティングするのが理想的で、週に1回程度のペースで話し合います。少なくとも、月に1回くらいのペースで、話し合いの場を持つべきだと言われます。1on1の特徴は、ミーティングの主導権を部下が握る点です。部下にいろいろと話をしてもらって、上司がフォローすることで、離職防止につながります。急激な生活リズムの変化や会社に関して理解しなければならないことが多く、中にはメンタルを崩してしまう新入社員もいます。そこで、1on1で話をすることで、部下は成長を実感できますし、上司の評価を受けることで、業務や課題克服への意欲を持ちやすくなります。

オンボーディングで有効な施策として、メンター制度もあります。これは、新人社員1人に対して、メンター1人を用意するものです。気軽に話ができるように、少し年上の先輩をあてがうといいでしょう。年代の近い先輩になんでも相談できる制度を導入することで、新人社員の心理的負担を軽減できます。メンター役の社員も、メンターとして後輩のケアやサポートをすることが、将来管理職になった時、部下の扱いのヒントになるでしょう。

20代後半になってくると、会社の将来性に不安を抱き、離職するパターンも多くなってきます。会社の将来性への不安を払しょくするには、キャリア支援が有効な対処法になります。

具体的なキャリア支援の施策としては、ジョブカード制度があります。これは、職業能力証明や生涯単位のキャリアプランを網羅したツールとして、厚生労働省が使用を推奨しています。ジョブカードを作成すれば、これまでのキャリアの振り返り、将来に生かせる自分の強みなどを整理できます。その上で、将来どんなキャリアプランを歩むのかのヒントになります。今までとこれからが明確になれば、新人社員の働くモチベーションアップにつなげられるでしょう。

セルフ・キャリアドックも有効な施策の一つです。キャリアコンサルティング面談や研修などを組み合わせることで、包括的な社員のキャリア形成のサポートを行うシステムです。セルフ・キャリアドックを繰り返すことで、社員が自分のキャリアを意識し、キャリアアップするには何に取り組めばいいのか、といったモチベーションの向上につながります。また、各社員のキャリアについて、会社も一緒に考える姿勢をアピールでき、会社への愛着心も増すでしょう。この施策も、離職リスクを低減する効果が期待できます。

ワークライフバランスに不満がある人に対しては、ワークライフバランスを尊重する企業であることをアピールしましょう。例えば、テレワークの導入を検討するのも一考です。在宅勤務など、いろいろな働き方の選択肢を設けることで、各社員に合った働き方を選択できるようにします。自分のペースで仕事ができるため、離職率の低下につなげられます。

フレックスタイム制の導入もおすすめです。これは、総労働時間は変えずに、出社時間と退社時間を社員が自由に設定できる制度です。社員によって朝型か夜型かや、生活サイクルは異なります。自分が働きやすい時間を勤務時間にすれば、労働効率もアップします。さらに、「何時から何時までオフィスにいなければならない」という、会社に縛られる雰囲気を払しょくすることができます。テレワークやフレックスタイム制を導入すれば、各社員の自由度が増しますので、会社に束縛されるのが嫌で離職する社員をなくすことができます。

職場の人間関係が嫌で、早期離職する人もいます。人間関係が理由となる早期退職を防ぐには、社内コミュニケーションを充実させることが大切です。しかし、コロナ禍により、対面のコミュニケーションの機会が減少しました。そこで考えたいのが、オンラインのコミュニケーションツールの導入です。若手社員に、不安なことがあれば気軽にオンライン相談するように指導しましょう。密にコミュニケーションをとることで、不要な誤解も回避できます。メンタルヘルスを崩すこともなくなるのではないでしょうか。

まとめ

3年以内に離職する大卒の学生は3人に1人程度おり、決して他人事ではありません。特に、中小企業のような事業規模があまり大きくない事業所では、早期離職が起こりやすいと言われています。

もし、せっかく採用してもすぐに離職してしまう若手社員が多いようであれば、会社の仕組みのどこかに問題があると推測できます。なぜ早期離職者が多いのか、ここで紹介した原因で心当たりのあるものはないか、見直しましょう。その上で、有効な施策を講じていくことが重要です。さらに、若手社員が仕事に対するモチベーションを失わないような組織や職場づくりに努めましょう。若手の不安や悩みを払しょくできるように、密にコミュニケーションをとることが効果的です。採用に関してお悩みのことがあれば、ぜひ弊社ジールコミュニケーションズまでご相談ください。

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