[最終更新日]2023年9月11日 [記事公開日]2022年9月22日
【採用担当者向け】女性採用によるリスクは本当に存在するのか?
新しい労働制度の導入で、企業で働く女性が結婚や出産などのライフイベントに応じ、短時間勤務や産休、育休が取得しやすくなったと言われてますが、一方で企業の人事担当者の多くが、いまも女性採用にリスクがあると考えていることが多いようです。女性採用にリスクがあると考えられている理由は何なのでしょうか? この問題に対応するためには、人事担当者が女性を採用することによるメリットとリスクを正確に把握し、女性採用を成功させる方法を学ぶ必要があると言えるでしょう。
女性採用のリスクとは?
かつて、多くの企業の人事担当者が女性採用にはリスクがあると考え、躊躇する社会的状況がありました。当時、女性採用のリスクとして考えられていたのは「女性は雇用してもすぐに結婚して会社を辞めてしまうので、育成してもコストが無駄になる」という理由でした。
雇用機会均等法が施行されて以降、社会制度も大きく変わっており、いまでは結婚=退職と考える女性も少なくなっていることは間違いありません。しかし、今もって企業の採用に携わる者の中に「女性を雇用することは会社組織にはデメリットになる可能性がある」と考える人が少なからず存在していることも事実です。
現在、採用担当者が女性採用にリスクを感じる理由は、女性社員のライフイベントに変化があった場合、結果として仕事が左右される可能性が高いと考えられていることにあります。女性には生物学的に男性とは異なる役割があり、特に出産に際しては自身の働き方を変える必要性が出てきますが、企業側は基本的にそうしたことを個人的な事情と捉え、考慮していません。そのため女性社員にライフイベントによる休職や勤務時間短縮が起きてしまうと、会社組織として戦力がダウンすることにつながります。女性社員の数が多いほど、その傾向は顕著になり、不確定要素が多い職場になってしまうわけです。女性が就職しやすい環境を提供するために産休や育休、短時間勤務といった制度が整えられたはずですが、結果的にはそれが企業の採用担当者に、女性採用のリスクを懸念させる皮肉な状況となっています。
女性採用がもたらす企業へのメリット
企業が女性採用を積極的に進めるメリットを見る前に、まず女性採用を進めなければならない理由、つまり女性採用の必要性について知っておく必要があります。
女性採用を積極的に進めなければならない理由の1つは、「少子高齢化」の問題です。少子高齢化が進行することにより、日本における生産年齢人口は著しい減少傾向を見せている状況にあります。この状況に対応するために、定年を過ぎたシニア人材や外国人とともに、女性にも社会で活躍してもらわなければならない必要性が高まっているのが実情です。
2つ目は、2022年4月に改正された「女性活躍推進法」にあります。この改正で301人以上の従業員がいる企業には、女性が活躍可能な組織となるための活動が義務付けられました。罰則はありませんが、義務に従わない企業は名称を公表されることになりました。女性が活躍できる組織へと変革するための計画や改善行動が行われていないことが公にされ、ネガティブなイメージが流布されることになります。女性採用を推進することは、企業の社会的な信用を継続的に維持するためにも必要なことなのです。
女性採用を積極的に進めるメリットとしてまず挙げられるのが、「優秀な人材を採用できる」ということです。これはもちろん、女性の方が男性よりも優秀という意味ではありません。2003年(平成15年)に厚生労働省がまとめた「働く女性の実情」によれば、日本における女性の大学進学率は世界第3位となっています。しかし、大学まで進学していながら就職をしていない女性は大卒女性の31%にも及んでおり、他の先進国の女性と比較すると11%もの差があります。つまり高学歴で優秀である可能性のある女性の多くが就労していないのす。このような女性を掘り起こし採用することは、企業にとっても優秀な人材を採用する契機を増やすことにもつながるでしょう。また、いままで応募することのなかった女性の応募数が増えれば、母集団を大きくし企業の体力そのものを増強することにもつながります。
女性採用を増やすことは企業文化の改革にもつながります。過去には多くの企業で「男性が働くこと」が当たり前のことであるとされ、男性中心の企業文化が定着していました。しかし、女性採用の枠を増やすことで、企業の中に女性ならではの視点を取り入れやすくなり、これまでとは異なる企業文化の形成が期待できます。また、女性採用を増やすためには女性が働きやすい職場環境を整えることが重要となり、時短勤務・フレックス制度などの導入や福利厚生の充実が進むことになりますが、これは女性社員のみならずすべての従業員が働きやすい環境を構築することにもつながります。また、女性が働きやすい職場を整備したり、女性管理職の割合が高い企業は採用において求職者に好意的な印象を与え、男女問わず優秀な人材を集めやすいという効果を生みます。
厚生労働省は女性活躍推進法に基づき、女性が職場で活躍できる取り組みで一定の基準を満たしている企業に3段階からなる「えるぼし認定」を行っています。「えるぼし認定」となった企業は自社の製品に「えるぼし認定」の認定マークをつけることができるようになり、公共調達や日本政策金融金庫からの融資を受ける際、通常よりも低金利で利用できるなど、各種優遇を受けることができるようになります。「えるぼし認定」以外にも、東京証券取引所が認定する「なでしこ銘柄」の認定を受けることで投資家への積極的な紹介を受けられるなど、女性採用に積極的になることで、各種公的機関から優遇措置を受けることができるようになります。
女性採用を成功させる方法
まず、女性採用の活動において、女性心理を理解することが大切になります。女性の求職者が何を重視して応募先の企業を決めているか、そのことを把握することで女性の働きやすい環境を整備する、より効果的な施策をうつことが可能となります。情報収集の手段としてウェブを利用するだけではなく、転職・就職サポート業務を行っている業者からリアルな情報の提供を受けることも重要です。
女性に限った話ではありませんが、採用活動において最も重要なことのひとつに「ペルソナ」の設定を行う、ということがあります。「ペルソナ」とは主にマーケティングにおいて使用されることの多い用語で、同様の意味合いを持つ言葉に「ターゲット」がありますが、「ペルソナ」は「ターゲット」よりも一層人物像を明確化したイメージを指します。
採用におけるペルソナの設定とは、応募者の人物像を明確化することを意味します。応募者の年齢・居住地やライフスタイル・価値観など人格面に至る詳細な項目の明確化を基本とし、女性採用においては、その女性が現在位置している生活や仕事の状況や女性特有の価値観などを踏まえた設定を行うことが大切です。特に女性の場合、子供の有無とその都合が応募先の企業を選ぶ理由に大きく影響することを考慮する必要があります。
ペルソナ設定をしたら、次にそのペルソナに訴求できるメッセージを考えましょう。「特定の人物」としてペルソナを設定したことで、その相手にどのようなメッセージを伝えれば訴求しやすいか見えてくるはずです。例として、ノルマ制の営業職に嫌気がさして別職種への転職を希望している人をペルソナとして設定しているのであれば、「ノルマに追われることのない生活をエンジョイしてみませんか」などといったメッセージや、別職種から転職経験がある社員のインタビューなどを載せることで、自社で働くメリットを打ち出しやすくなります。
女性目線で求人情報を作成することも重要なポイントとなります。男性と女性とでは、求人情報を確認する際特にチェックするポイントが違ってくるので、女性採用を目的とする求人情報は女性目線に合わせて作成する必要があります。女性は文章による情報よりもビジュアルでとらえる情報に判断の影響を受ける傾向が強いとされます。求人広告に用いる画像を女性向けに工夫しましょう。雰囲気を重視する傾向もあるので社内の雰囲気がわかる情報を発信することも効果的です。
女性は男性と比較して仲間意識が強い傾向にあるとされています。同期入社の仲間がいると安心するので、中途採用で女性を募集する際は複数名の募集を検討すると良いでしょう。この場合、求人広告や求人票に「複数名同時募集」や「同期入社がいるので安心」などといった見出しを付けると効果的です。もともと女性社員があまりいない、あるいは募集する部署での女性社員の比率が極端に少ない場合には、働きやすい環境であることを強くアピールすることで女性の安心感を喚起し、募集者を惹きつける効果が期待できます。オフィス全体の清潔感をアピールしたり、産休や育休制度がいかに充実しているか、さらには時短制度といったポイントを明記することで、「働きやすい職場」というアピールをすることができます。
もともと女性採用の実績が少ない会社である場合は、まず実績を作ることが重要となります。この場合、採用ターゲットのハードルをあえて下げてみることを検討してみるのもひとつの手法として有効です。例えば、本来必要している人材が即戦力となりうる人であっても、あえて入社後の育成による活躍が期待できるポテンシャル層にターゲットをおいて募集をかけることで、女性の応募者を集めやすくすることが期待できます。エンジニアやプログラマー等、元来経験者採用を希望することの多いウェブ関連のクリエイティブ職でも、最近では経験を問わず採用する企業も増加しており、「手に職をつけたい」「新しい仕事にチャレンジしてみたい」といった動機を持つ女性求職者の応募が増えている状況にあります。「未経験者歓迎」等、経験の有無を問わない旨を求人広告や求人票に載せれば、より多くの女性応募者を集めることができるでしょう。
女性採用は入社して成功というわけではありません。採用した女性社員が長く会社に勤務して活躍できる環境を整えることが目標となることを意識するようにしましょう。
まとめ
少子高齢化や人口減少の問題は今後ますます深刻化し、企業も人手不足の問題を抱えて業務に多大な支障を生じる可能性も高まることは間違いありません。女性採用を積極的に進めることは、こうした問題への対策としても、今後の企業にとっては必須の課題となっていくでしょう。女性採用を増やすことで企業が得られるメリットは人手不足解消以外にもさまざまなものがあります。積極的な女性採用を検討しましょう。
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