[最終更新日]2023年9月12日  [記事公開日]2022年9月21日

【既卒採用】採用設計にオススメなフレームワークと設計のポイント

採用活動においては新卒の一括採用を主体としている企業が多いですが、少子化が進んでいる昨今、それだけでは人材を確保しきれない状況になりつつあります。そこで注目を集めているのが、「既卒」の採用です。しかし既卒には新卒とは異なる部分も多いので、企業はその違いを正しく理解した上で、適切な採用設計を行わなければなりません。

既卒採用について

既卒採用について

既卒の採用を行うには、まず「既卒」という言葉の定義を明確にしておかなければなりません。日本語としての意味だけを考えれば、読んで字のごとく「既に学校を卒業した人」という意味合いになりますが、採用市場で言うところの「既卒」という言葉は、一般的にもっと的を絞った狭い意味合いで用いられています。

採用市場で言うところの「既卒」とは、大学や専門学校、高校などの教育機関を卒業した者のうち、正社員としての就業経験がない求職者のことを指します。つまり簡単に言うと、学校を卒業後も就職先が決まらず就活を続けている就職浪人の人、派遣社員やフリーターといった非正規雇用の形で働いていた人、どちらもしていなかったニートの人などです。それに加えて、留学していた人、公務員試験に失敗した人、起業に失敗した人、スポーツや演劇といった一般的な就職以外で生計を立てようとしていた人なども含まれます。いずれにしても履歴書に記載できるような職歴がなく、学校卒業から応募に至るまでに、何をしていたのか不明な空白期間が発生するのが特徴です。

卒業からの年数には特に決まりはありませんが、厚生労働省の指針を参考に、卒業後3年以内の既卒者は新卒と同じ新卒採用枠で扱い、それ以上空白期間が長い既卒者は、経験者などと同じく中途採用枠で扱うのが一般的です。そのため採用市場で「既卒」という場合には、学校を卒業した未就業者のうち、とくに3年以内の者を指すことが多いです。しかし規定があるわけではないので、新卒枠で扱うか中途採用枠で扱うかの分かれ目を、もっと短く設定する企業もあれば、もっと長く設定する企業もあります。新卒枠で扱うにせよ、中途採用枠で扱うにせよ、既に学校を卒業しているため、年度の途中であっても、すぐに入社できるというのが既卒採用のメリットです。

ちなみに卒業後3年以内の求職者のうち、短期間ながら一度でも正社員としての就業経験がある者は「第二新卒」と呼ばれて区別されます。2つ目の違いは、社会人としての基本的なビジネスマナーを身に着けているかどうかという点です。「既卒」の場合は新卒と同様、基本的には社会人として働いた経験がないので、就職した企業がビジネスマナーの研修や教育を行う必要が出てきます。

ただし前述のように、既卒の場合、卒業後の経歴が人によって大きく異なるため、一概には言い切れません。プロアスリートを目指していた体育会系の既卒には礼儀やマナーが身に付いている人が多いですし、契約社員として働いていた既卒には実践的なビジネススキルが身に付いている人もいます。そういう既卒を採用した場合には、新人研修がほとんど必要ないこともあるでしょう。

また、留学経験のある既卒の中には、高度な語学スキルを持っている人もいますし、起業に失敗した人に至っては、思いもよらない発想やスキルを持っている場合もあります。そのように多種多様で、一括りに判断しにくいというのが、既卒採用の特徴です。もしも狙いを間違えると、採用に足る人材を見つけられなかったり、入社後にミスマッチを起こしたりと、期待外れの結果に終わるかもしれません。だからこそ既卒採用においては、事前にどのような人物をどのように採用するか、採用設計を行うことが重要なのです。

採用設計にオススメなフレームワーク

採用設計にオススメなフレームワーク

企業の採用活動では、TMPと呼ばれる採用設計のフレームワークを活用することが少なくありません。TMPというのは、Targeting(ターゲティング)とMessaging(メッセージング)、そしてProcessing(プロセシング)という3つの採用プロセスの頭文字をとったものです。

Targetingは、企業が採用設計で最初に行うプロセスです。ここでは、企業にとってどんな人材が必要なのかという点を決める作業を行います。具合的に行うことは、経営層及び現場からヒアリングを行い、具体的にどんな人材が必要なのか、ターゲットを絞り込みます。

経営層からのヒアリングでは、企業の5年後及び10年後を見通して、具体的にどんな人材が必要なのかをヒアリングします。中長期の展望も含めて、こんな企業を作りたいからこんな人材が欲しい、といった意見を聞いてまとめます。

現場からのヒアリングでは、即戦力として実務で働けるのはどんな人材かという、短期的な展望が基盤となります。具体的にどんなスキルを持っている人が欲しいのか、どんな素質がある人が職場に必要かという点をヒアリングしたうえで、採用設計のフレームワークに組み込みます。この作業を十分に行うことで、採用におけるミスマッチを最大限に回避できるでしょう。

こうした定性的な要件設定は、漠然としたものになりがちです。そのため、実際に採用面接を行うと、採用担当者によって感じ方が異なってしまうなど、採用の判断に客観性を欠くことがあります。

そこで、定量的な要件も採用設計では必要となります。これは、求職者が持っているスキルや素質などを数値で評価するもので、ストレス耐性や指向性、スキルなどを適性検査で測るのが一般的です。数値化された指標なら、どの採用担当者にとっても分かりやすく、より公平な採用活動が可能となります。

ターゲティングの次には、メッセージングを行います。これは、転職市場や就職市場において企業がターゲットとする人材層へ働きかける広報活動の段階です。その際には、自社が欲しいと思っているターゲット層からペルソナを設定し、そのペルソナへ訴えかけるような広報を行うのが効果的です。広報媒体は多種多様で、企業のWebサイトを活用するほか、SNSやテレビCM、雑誌など様々な媒体があります。自社の求めるターゲットに合った媒体を選んでください。

TMP採用設計フレームワークの最後のプロセスは、プロセシングです。これは、実際に求職者を選考するプロセスのことで、誰が採用担当者になっても同じアウトプットとなるような選考フローやチェックリストの構築が重要となります。

選考プロセスにおいては、多くの企業は「候補者を選ぶ」立場にあると考えています。しかし、必ずしもそうとは限りません。優秀な求職者ほど、複数の企業から同時に内定をもらう可能性が高いものです。そして求職者は、企業の選考プロセスなどを比較しながら、どの企業が自身に合うかを考えます。つまり、求職者が企業を選ぶのです。優秀な人材を確保するには、求職者から選ばれる企業になることを目指した採用フローを構築することをおすすめします。

プロセシングにおいては、人材を見極める眼力を持つ面接官を育成する必要もあります。優れた面接官は、求職者から本音を引き出すことができたり、求職者の本質を見抜くような質問ができるものです。また、求職者に選ばれる選考を行うには、企業の良いイメージを求職者に与えられる面接官でなければなりません。面接という選考プロセスをスムーズに進めるためにも、求職者に選ばれるためにも、面接官はコミュニケーション能力や高い対人スキルを備えていなければならないのです。

TMPの採用設計フレームワークは、企業が人材採用を考えたタイミングから実際に選考するプロセスまでを網羅しています。しかし企業の採用活動は、選考するプロセスで作業が終了するわけではありません。内定通知を出した後のフォローも大切な作業です。既卒の場合は新卒に比べると内定から入社までに必要な期間が短いですが、その間にも他社に乗り換えられないようフォローが必要ですし、入社後も早期退社につながらないようフォローが必要です。

採用設計のフレームワークは、TMPのような基本的なものを活用したうえで、企業ごとに肉付けをしてオリジナルの採用設計フローを作ることをおすすめします。

採用設計のポイントと流れ

採用設計のポイントと流れ

採用設計では、失敗しないためのポイントを抑えることが大切です。ポイントからずれた設計をいくら実行していても、人材のミスマッチや早期離職が起こりやすくなってしまいます。それに、企業が求めている人材ではない素質の人材を雇用しても、企業にとっては目標に到達することが難しくなってしまうでしょう。

1つ目に注意したいポイントは、人材採用と人材育成をリンクさせたフレームワークを設計するという点です。企業が求める要件をすべて満たしている人材を探しても、なかなか見つからないかもしれません。その場合には、採用要件として持っていてほしい素質と、人材育成によって身に着けてもらう育成要件を別途で考えるという方法が効果的です。採用要件で多くの素質を満たす人が見つからない場合でも、育成要件でカバーできれば、中長期的には企業にとって大きな利益をもたらす人材へと成長してくれるはずです。

2つ目に注意したいポイントは、現場で働く社員をどのようにして面接フローに取り込むかという点です。既卒採用を行う企業の中には、人事の採用担当者が面接をした後に、実際に配属される部署で働く社員と面接するプロセスを設けている所があります。現場から要望のあがる専門的なスキルの優劣は、人事担当者には判断がつきにくいものです。現場で働く社員による面接プロセスを採用設計フローに入れることで、より現場での活躍が期待できる人材を採用することが可能になります。また現場で働く社員にとっても、人員選考に対する責任感が生まれますし、こんな人材が欲しいという意欲も高まります。結果的に、現場の士気が高まるというプラスの影響が期待できます。

それでは、採用設計はどのような流れで進めれば良いのでしょうか?

何もない状態から採用設計のフローを構築するなら、上記したTMPを軸にすると流れをつかみやすくなります。まず最初に社内でヒアリングを行い、どんな人物が必要なのかという点を絞り込んでいきます。これは上記のターゲティングのプロセスとなります。この際には、過去の実績をもとに、こんな人物ならこんなパフォーマンスをするだろうという統計を参考にしても良いですし、会社の未来をこのようにしたいから、そのためにはこんな人物が欲しいという未来の将来像から理想の人物像を絞り込むこともできます。

採用設計の流れにおいて、もっとも重要となるのはどんな基準で候補者を選考するかという部分です。理想的なのは、誰が面接官になっても同じアウトプットを得られることなのですが、性格ややる気を評価する際にはどうしても面接官の主観や感情が入ってしまうため、なかなか難しいでしょう。そうした部分を含めて、できるだけ客観的かつ公平に評価するためには、選考項目をWant要件やMust要件、足切り要件など細かく設定したうえで、面接官の評価基準の統一化を図るのが得策です。

例えばWant要件では、こんな素質が欲しいという希望の要件をリストアップします。例えば、その場の状況に合わせてフレキシブルに対応できるかどうかという対応力や、相手の立場や状況を正しく理解して適切に対応できるかというロールプレイスキルなど、できるだけ具体的な能力やスキルをリストアップすることで、面接官はその素質を見極めるための質問を候補者へ問いかけやすくなります。

面接項目の基準設計では、プラス評価となる項目に加えて、足切りラインも設定しておくことをおすすめします。例えば、〇年以上継続した活動がない人はNGとか、空白期間が〇年以上の人はNGなど、具体的な数字で基準を決めておくと良いでしょう。その場合、誰が面接担当者になっても、大きなばらつきが出にくくなります。

まとめ

既卒の採用活動においては、採用設計のフレームワークを事前に構築することが必要不可欠です。既卒の場合は新卒と違って応募者の経歴が様々ですから、それを理解したうえで、誰が面接官になっても同じ評価ができるよう基準の統一化を図りましょう。そうすれば、企業にとって有益な人材を確保できるチャンスが高まります。

弊社「ジールコミュニケーションズ」では、既卒採用も含めて企業様の採用活動を支援する様々なサービスを展開しています。ぜひご相談ください。

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