[最終更新日]2023年9月12日 [記事公開日]2022年8月22日
【教育機関向け】就職率100%を目指すための教育と支援について解説
教育機関が自らの魅力をアピールする内容としては、第一にその教育や研究内容があります。同時に、多くの学生や親にとって重要な点が就職率です。大学や専門学校で高い教育を受けられるとしても、それが就職に結びつかないと意味がないと考える人が少なくありません。
そこで、キャリアセンターとして、どのように就職率を上げることができるのかを考えるのは重要事項になってきます。やはり、教育機関は就職率100%を達成したいとの目標を持って努力をしているわけです。その裏側にある取り組みや工夫の実情に迫ってみましょう。
このコラムでは、教育機関が抱える学生の就職率の問題、就職率100%を目指す際の目的と心得、就職率100%を目指すための支援などについて解説します。貴学が教育機関としての魅力を向上させるための参考にしてください。
学生の就職率の問題について
文部科学省と厚生労働省が共同で行った「令和3年度大学等卒業予定者の就職状況調査(4月1日現在))」では、令和3年度卒業予定者のうち大学の就職率は95.8%(前年同月比-0.2ポイント)。短期大学では97.8% (+1.5)、高等専門学校では99.1% (-0.9)、専修学校では94.7% (+3.5)でした。
全体としては就職率96.0% (+0.2)と微増ではあるものの、大学や高等専門学校では昨年度より若干減少に転じていることが分かります。とはいえ多くの教育機関では、9割以上の就職率を維持していることは確かです。
学生の属性によっても差がある就職率
大学の就職率をさらに細かく見ていくと、それぞれの層で多少の差異が見られます。たとえば、男女別で見ると、女性の方が就職率が高いのです。大学全体の数字では、男性が94.6%のところ女性は97.1%、国公立大学となると、男子94.7%に対して女性が97.6%となっています。
さらに理系か文系かの違いで見ると、文系の就職率は95.4%ですが、理系では97.4%です。理系学生の就職率が高いのは例年のことですが、それだけに文系の学部が多いところでは、学生の就職活動に対してさらなる支援が必要となってきます。他校との差別化を図る工夫が求められるでしょう。
地域による差が大きいことにも注目です。関東、中部、近畿、九州など大都市圏の大学就職率は総じて95%以上あり、前年度から大きな変化がないのに対し、北海道・東北では93.4% (-3.6)、中国・四国では92.2% (-2.3)と大学就職率が低く、前年度からの減少幅も大きくなっています。地方だと学業のレベルが高いとしても、地域による差によって就職が難しくなるリスクがあることを理解して、その差を埋められるような対策が必要です。
このように学生の就職率は、その属性によって差が見られます。とりわけ大都市圏にある理系学生の就職率が高く、その魅力に惹かれて入学希望者も集中するわけです。教育と就職の分野でも、地域格差と過疎化が生じるリスクがあるのが一つの問題となっています。
就職率を重視する弊害
総じて9割以上の就職率と高めの水準をキープできているため、平均に達しない大学についてはかなり厳しい評価を受けてしまう可能性があります。どの教育機関でもより高い就職率を出そうと大きな努力を払っているため、学校同士での競争が生じているのも、就職課やキャリアセンターで働くスタッフにとっては悩ましいところでしょう。今まで通りの取り組みでは、他校に勝てなくなってしまうからです。
多くの学校は就職率100%を目標としていて、達成するための様々な工夫をしています。就職率アップのための新しい戦略を考案しなければ、なかなか差をつけられません。それだけに、就職課スタッフの負担とストレスが大きくなりがちです。
また、就職率だけを考えることで、弊害が生じるリスクもあります。たとえば、内定を取れれば良いという考えで学生の希望やレベルに合っていない企業を紹介し、とにかく採用にこぎつけるという就職支援が行われてしまう可能性が生じるのです。学生の希望する業種や条件でなくても、とりあえず就職することが大事と勧めて、志望していない業界や企業に入る学生が出てくる恐れもあります。
データ上は就職率が高くなり、優れた就職支援をしているように見えが、実態は学生目線でのサポートではなく、単なる数字稼ぎとなってしまっているのです。こうした支援の仕方をしていると、当然、入社はしたものの長く続かないという結果になります。そのため、離職率が高くなる傾向が強いのです。就職率を高めるだけなく、離職率を下げるための取り組みも同時に行っていかなければなりません。
就職率100%を目指す際の準備と心得
ここからは、就職率100%を目指すための準備と心得について説明します。
就職率100%を目指すための心得
前述のように、全国の教育機関の就職率は9割以上です。100%達成まであとわずかのように見えますが、残りの10%というのが大きな壁です。就職率100%は大きな目標で、簡単には達成できません。
就職支援をする立場としては、「あと少しの数字だから…」「今までの努力を続けていればいずれ達成できる」という楽観的な見方は捨てた方が良いです。最後の1割を埋めて就職率100%を達成するには、今までとは違う切り口の支援や、今までより質の高い支援が求められると認識してください。
そして、もう一つ大事なのは、就職率100%を目指す目的です。数字だけを求める努力は、学生をないがしろにする恐れがあります。望んでもいない就職をするように圧力をかけるようなことがあってはなりません。なぜなら就職率100%というのは、あくまでも学生のために支援をより充実させるのが目的だからです。
学校として就職率100%をアピールするために数字を出す、という考え方にならないよう気を付けてください。こうした目的で就職支援を行ってしまうと、確かに数字は向上するのかもしれませんが、後で必ずひずみが生じ、大きな問題となって現れてきます。本来、学校側の就職支援は、学生の将来のためにサポートをするが目的です。こうした心得をしっかりと保っていれば、バランスの取れた、学生に寄り添った形での支援を続けられるでしょう。
就職率100%を目指すための準備
就職率100%を目指すための準備としては、まず自分たちの学校の現状を客観的に分析することが先決です。どの学校でも、就職先と内定率について、学部や男女別などの数字を取っていると思います。それを確認して、全国平均や地域内の他の学校と比較しましょう。これが基本的なデータとなります。
そのうえで、自分たちが現在行っている就職支援活動を、時系列でリスト化してみます。入学してからの時間軸で、大学1年生の時にはこんな支援をしている、2年生向けにはこのようなイベントを開催している、といった点を書き出していくのです。これにより、早い段階から丁寧なバックアップができているか、手薄になってしまっている時期はないかを確認できます。
そして、活動の内容についても分類してみると良いでしょう。その際には、就職率アップにつながるいくつかの項目に分けてみると、分析がしやすいです。たとえば、面接対策やエントリーシート作成支援などの実践的な対策、求人情報の提供、就職試験対策、学生に対する個人面談、カウンセリングといった、ジャンルごとの活動をリスト化していきます。そうすると、どの部分で対応が薄いのかが見えてくるはずです。
多くの学校では、求人情報の提供はしっかりとしているものの、個人面談や面接対策などのより絞り込んだ対応には時間がかけられていない傾向があります。もちろん、こうした活動にはより時間と労力がかかりますので、就職課として対応しきれないという現状もあることでしょう。しかし、就職率100%達成にはより丁寧なケアを実施することが欠かせない面もありますので、真剣に検討すべきポイントです。
他にも、効率の良いシステムや媒体を確保、活用できているかを確認し、必要なら新規導入のための準備を始めます。学生へのリアルタイムな情報提供ができるよう、専用のホームページを作ったり、SNSでのコミュニケーション手段を構築したりするのが、そのための一つの方法です。求人を効率よく確保するために、人材紹介サービスと連携したり、企業説明会や就職イベントにより多く参加したりすることも、就職率100%を目指すうえでは有効な手段となります。OBやOG訪問の機会を増やせるように、卒業生との連絡ネットワークを作ることも、事前に準備できることです。
就職率100%を目指すうえでの支援
こうした分析と準備を進めることができたら、本格的に就職支援戦略の見直しを図りましょう。高い就職率を挙げている学校の方針を学び、そこから教訓を得ることができます。こうした学校では、学生が入ってきた瞬間から就職支援をする取り組みをしているものです。
入学時から就職支援を開始する
高い就職率を挙げている学校では、1年生の段階から就職活動のフローを指導します。特に、どの時点から具体的な就活を始めるかについて、スケジュールを教えることが先決です。近年は企業の採用活動が早期化していますし、意欲的な学生なら3年生になる前からインターンシップなどを通して、就活の前準備をしていきます。そうなると、企業についての情報収集はさらに前からです。それだけに、学生の活動スタートが遅れることがないように、1年生のうちから就活スケジュールを考えるための支援を行う必要があります
入学時の段階では、ほとんどの学生がまだ就職という将来に現実的な見方をしていません。そこで、1年生のうちから面談をして、適正評価を行い、それぞれの進路希望を聞き取ります。そうすれば学生に、早い段階から就職についての意識付けができるのです。
早い段階から就職支援のスケジュールを組む
さらに、早い時期からマナーについての研修、指導をしているところは内定を得やすくなります。というのも、身だしなみや受け答えの仕方、コミュニケーション能力を含むマナーは、付け焼き刃では身につかないからです。企業の採用担当官はたくさんの学生を見ていて、それが表面上のものなのか、しっかりとしたマナーを身につけているのかを見抜きます。それだけに、実際に就職活動を始めてから慌ててマナー講習を受けても、なかなかうまく行かないのです。できるだけ早く始められるように、キャリアセンターとしても支援プログラムを組みたいものです。
このように、早い段階から就職支援を始めるべき点を考え、予定を組んでいくことが重要です。これにより、その後に行う進路ガイダンスがより有効なものとなり、就職までの道筋がはっきりとしてきます。大学2年生の半ばくらいには、ある程度学生自身が進路の方向性を決められるようになるでしょう。公務員を目指すのか民間企業か、一般職か専門職か、地元企業か大企業かといった、大まかな道筋を考えるわけです。
これができていると、それぞれの方向性に合った指導をしやすくなります。選考過程や面接の内容は就職先によって大きく変わりますので、それに応じた対策を早いうちからしないといけないからです。特に、就職試験があるところでは、模擬試験を複数回実施する必要があります。どのタイプの就職をするか決まっていないと、模擬試験の内容も決められません。
学生一人一人に合わせたきめ細やかな支援を行う
就職率100%を目指すうえで重要なのは、学生一人一人に合わせたケアです。
内定を決める学生の大半は、全体に対する指導や情報提供で十分で、自分たちで考えて進路を決め、必要な指導を受けつつ就活をします。これが就職率9割に当たる学生たちです。しかし、残りの大きな壁である1割の学生たちは、自分たちで考えて実際に行動に移すのが難しい傾向にあります。もしくは、いわゆる一般的な就職支援では、当人に合ったケアができないのです。そこで、集団としてのサポートだけでなく、個人的な支援を行っていくことが重要になってきます。
その際には、しっかりと本人の希望を聞き取ることが大切です。中には、起業をしたいとか、海外での就職を希望しているといった学生が出てくることもあるでしょう。こうしたケースでは、標準的な就職支援とは違うアプローチが必要となります。このあたりのいわゆる少数派をきちんと支援できるかで、就職率が上がるかどうかが決まってくるわけです。
まとめ
卒業生の就職率を高めることは、学校にとっても、学生にとっても重要なことです。就職率100%を目指すためには、現状を分析して、弱点となっているところを補強することが肝心です。特に、集団だけでなく個人への支援を充実させること、入学してすぐの早い時期から支援をスタートすることが大きなカギとなります。支援戦略を大きく見直して、より良いサポートができるように取り組んでいきましょう。
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