[最終更新日]2023年9月13日 [記事公開日]2022年7月14日
デュアルキャリアがうまくいかないと悩むアスリートのための対策コラムです
アスリートが競技選手として活動をしながら、別の肩書で活動することを「デュアルキャリア」と呼び、近年世間的な注目を集めています。スポーツ活動と並行して行われるキャリアには進学や留学、職業などいろいろなものがありますが、これまでアスリートが現役引退後に新たなキャリアを目指す「セカンドキャリア」とは違った意味合いを持つことになります。
しかし、デュアルキャリアを目指しつつもなかなかうまくいかないという事例も多く聞かれます。アスリートがデュアルキャリアを目指すにあたっては、うまくいかない原因と対策、そもそもデュアルキャリアを始めるにあたり、知っておくべき準備と心得について学んでおくことが重要と言えるでしょう。
デュアルキャリアがうまくいかない原因
アスリートとして成功することのできる人は、すべての運動選手の中のほんの一握りに限られており、常に過酷な競争を勝ち抜いていくという熾烈な環境に置かれていることは間違いありません。成功のためには他の選手を超える厳しい努力の積み重ねは当然として、運を持ち合わせることも重要となります。
このような実情を鑑みたとき、やがて訪れる現役引退の時に備えて競技とは別の「生きる道」を並行して用意し、2つの肩書で生きていくことを「デュアルキャリア」と呼びます。しかしデュアルキャリアを志してもうまくいかないというケースも少なからずあるようです。アスリートのデュアルキャリアがうまくいかないのには、いくつかの理由が考えられます。
まず、アスリート全般に言える傾向として「社会的スキルやノウハウの不足」の問題が挙げられます。一線以上のレベルで活躍するアスリートほどむしろその傾向は強くなるとも言われています。一線上で活躍するアスリートほど、競技に入れ込んで経験と技術を突き詰める能力にたけていますが、一方で自分の競技以外に関することに対しては無関心であることも多く、結果として社会経験が一般の人と比較して乏しい傾向にあります。そのため、競技から離れた社会人としてキャリアを積むための基礎スキルが身についていないことも多いです。特にアスリートと並行して何かの仕事を身に着けようとする場合、即戦力としての能力を求められることが多く、対応することが困難であるということも少なくありません。
本来、アスリートは何かひとつのことを極めようとすることにたけた人たちであると言えます。それはスポーツ競技以外の世界で生きていくためにも非常に有力なスキルともいえるはずですが、多くの場合、アスリートはその努力をすることをある意味当然と思ってしまい、それが自分の「強み」であることがなかなか認識できない傾向にあります。また、そのスキルがビジネスなどの他のキャリアとどう結びつければよいか、それがわからず本来自分が持っているはずのポテンシャルを最大限に引き出せない要因にもなっています。
人生の多くの時間をスポーツ競技に捧げてきたアスリートには、その競技以外に新しく情熱をそそげる対象が見出しにくいというのも、アスリートがデュアルキャリアを目指すための障壁となっていることも確かです。選手として現役である以上、競技に全力を尽くしたいという思いが強く、結果として他のキャリアを目指す意欲に欠いてしまいがちです。
デュアルキャリアがうまくいかない時の対処法
デュアルキャリアを実践しようとしても、自分の力だけではなかなか難しいことであることには違いありません。特にこれまで経験を積み重ねていない新しいキャリアを積んでいくことは困難を伴います。デュアルキャリアがうまくいくようにするには、それなりの実践方法を考える必要があります。
まず、デュアルキャリアを支援している企業のサービスを利用してみることを検討してみましょう。企業の中にはデュアルキャリア採用を実施している企業もあり、そのような会社への就職を目指すのは有効な方法です。また、アスリートのキャリアを支援することを目的とし、キャリアに関する相談や競技と並行して働くことができる場所を紹介するサービスなどもあります。
アスリートがデュアルキャリアを実践していく最大のネックは、練習や試合のスケジュールと一般的な勤務体系との折り合いをつけることが困難である点にあります。しかしアスリートのデュアルキャリアを支援したり、デュアルキャリア向けの求人を行っている企業は増えています。
デュアルキャリア採用を行っている企業と支援サービスについては、以下のような事例があります。
健康補助食品や衣料部外品などの企画販売を行っている「ベネシード」では、15年程前からアスリートのデュアルキャリア支援を行っています。有名なアスリートとしては元柔道家の松本薫選手も引退後にベネシードに勤務し、その関連会社でヴィーガン対応のアイスクリームの製造販売に携わりました。
ブランド品や貴金属などの買取と販売を行っているバリュエンスホールディングスでは2020年9月から「アスリートのためのデュアルキャリア採用」を開始しています。10競技について各10人、計100人のアスリートを採用するというもので、経済的理由やコロナ感染症の影響で競技生活をあきらめた人への支援スキームとして機能しています。
主に鳥取県米子市で多くの保育施設を持つクローバーホールディングスは、「クローバー米子フィオーレFC」という女子サッカーチームも運営し、選手が長い競技人生を送れるよう、自社運営の保育施設でキャリア支援を行っています。引退後に限らず選手期間中でも正社員雇用として採用される仕組みとなっており、収入面でアスリートをバックアップしています。
東京都スポーツ文化事業団では東京都からの委託事業として、オリンピックやパラリンピックなどの国際大会を目指すトップアスリートに対し、現役アスリートの就職と採用をサポートすることで競技を安心して継続できるよう支援する事業を行っています。競技者とその指導者に対しては、アスリートが就職するために有効な履歴書の書き方や面接対応の仕方などに関するセミナーや先輩アスリートとの交流会を開催。企業へはアスリート雇用の実情や雇用によるメリットに関するセミナーをJOCと協力して行い、両者のマッチング役として活動しています。
ただし競技生活を続けながら、上記のようなデュアルキャリア採用を行っている企業を1つ1つ自力で探し、就活対策まで自力で行うのは大変ですし、オリンピックを目指せるほどの実績を積んだアスリートでなければ、公共サービスの利用も簡単ではありません。そうなると、それ以外の大多数のアスリートにとっては、デュアルキャリアの形成がいっそう難しいものに感じますよね。
そういうアスリートの皆さんには、民間の就活・転職エージェントが展開する、アスリートの就職支援に特化したサービスを活用するのがオススメです。弊社ジールコミュニケーションズでも、アスリートのデュアルキャリアを支援する「アスリート向け就職サポート」を展開しています。弊社ジールコミュニケーションズは、社長を始めスタッフのほとんどが元アスリートや体育会系の出身者ばかり。アスリートの就職を支援するプロです。しかし支援サービスの利用は完全無料ですので、費用面での心配は一切いりません。企業探しも就活対策も私たちプロがお手伝いしますので、二人三脚でデュアルキャリアを成功させましょう。
デュアルキャリアがうまくいくための準備と心得
アスリートとしてデュアルキャリアを実践していくにあたり、まず理解しておかなければならないのは、どうしてもそれまでより競技にかけることのできていた時間を分散することになり、アスリートとしてのパフォーマンスが下がる可能性があるということです。
デュアルキャリアを実践する前に、準備としてまず自分の競技に関する考え方やトレーニングスケジュールについて見直しをしてみることが重要になってきます。学業であれビジネスであれ、自分の「もうひとつのキャリア」として選択したキャリアにどれほどの時間を費やすことが必要か、週間単位の自分のスケジュール表に割り振って、そこからどれだけトレーニングの時間を確保することができるのか、考えてみましょう。
この時大切となってくるのが意識の切り替えです。トレーニングに費やせる時間が減ることへの不安を、「限定された時間内でいかに効率の良いトレーニングが可能か」という前向きな意識に改めることが重要となります。限られた時間でいかにトレーニングするかということに意識を集中して、トレーニングや大会に臨む集中力とモチベーションの向上を目指しましょう。
アスリートがデュアルキャリアを実践するにあたり、最も大切な心得は、競技と競技以外のキャリアを無関係のものとして考えないことです。言い換えれば、競技ど競技以外のキャリアを結び付け、相互作用で互いの経験や知識を活用することを意識することです。
競技以外のキャリアを競技とまったく無関係なものとして捉えてしまうと、それに対するモチベーションを高めることはとても困難になります。本当は競技だけに集中したいという願望は、アスリートであれば誰もが考えることでしょう。その意識が強くなればなるほど、競技以外に費やす時間は無駄に思えるようになってしまい、結局うまくいきません。いかに競技以外のキャリアで学んだ知識や経験を競技に活かすか、それを考えることが大切です。また、競技から得た知識が競技以外のキャリアに活かせることもあるはずです。
デュアルキャリアがうまくいくためには、デュアルキャリアを実践する意義=メリットを知っておくことが必要です。まず、デュアルキャリアを行う準備として、そのメリットを理解しておきましょう。
デュアルキャリアを実践することで、長期的視点に立って自分の人生を考えることができるようになります。競技によって差はありますが、基本的にアスリートにとっての競技のピーク期間は決して長い期間ではありません。その期間に競技生活だけで十分な資金を稼ぎ出せるのは、それこそほんの一握りのトップアスリートだけです。引退後も現役時の実績をもとに、その競技に関わって生活していけるアスリートは、全体の3%にも満たないとされています。自分がその3%に該当すると思えるのであれば別ですが、多くの場合現役中に引退後を見据えた長期的視野から競技以外のキャリアを持つことで、選手としての現役引退後も有意義に過ごすことが可能になります。
アスリートとして競技に集中した生活を送ることは、どうしても人間関係を狭めることにもつながりがちです。競技以外の活動に取り組むことは、自分がそれまで知らなかった人脈や情報を得る大きなチャンスとなり、結果として引退後の就職や人生選択(目標の選択)の幅を広げる機会を得ることになります。競技だけではない自分の生き方を模索することができるのも、デュアルキャリア実践の大きなメリットと言えるでしょう。
競技に熱心であるほど、引退後にいわゆる「燃え尽き症候群」に陥るアスリートが多くなるのは確かです。この「燃え尽き症候群」は引退後の再就職を困難にする大きな要因となってしまいますが、現役時代にデュアルキャリアを実践することで、自分が生きていくもうひとつの場を獲得し、引退による「燃え尽き」をある程度緩和することも可能です。競技以外の居場所を持つことは自分の気持ちを安定させ、引退の不安を軽減することにもつながります。
競技以外のキャリアとしてビジネスを選択するのであれば、当然収入源を複数持つことによる経済的メリットを得ることができます。競技者時代には活動費用の捻出に充てることができますし、引退後の経済的不安を解消することも可能です。
デュアルキャリアを実践するにあたっては、まず二つのキャリアを両立させるためのスケジュールの見直しを準備として行うこと、そしていかに競技以外のキャリアが自分にとって有益であるか、そのメリットを理解することが大事です。二つのキャリアで得られるスキルや知識を相互に活かすことで、両方の環境にとって有益であると思えるモチベーションを築くことが重要であると言えるでしょう。
まとめ
デュアルキャリアがうまくいかない理由には、気持ちの持ち方が大きく関係しています。なぜデュアルキャリアを行うのか、競技以外のキャリアを持つことにどうすれば意義を見出すことができるのか、そのことを良く見直してみることがとても重要です。もちろん、そのモチベーションが経済的理由であっても問題はありません。いかに前向きに競技と競技以外の双方に対して「やる気」を持てるかが重要なポイントです。
近年ではスポーツ界においてアスリートのデュアルキャリアに対する理解も広がっています。自分だけの力でデュアルキャリアをしてもうまくいかないことはありますが、その場合は支援団体や支援を行っている企業を有効活用すると良いでしょう。
ジールコミュニケーションズでは、新卒・既卒での就職活動、第二新卒、中途で転職活動をはじめ、企業向けの採用支援や学校・キャリアセンター向けのサポート支援を行っております。豊富な実績や手厚いサポートによってお客様に向き合った支援サービスをご提供いたします。
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