[最終更新日]2023年9月25日 [記事公開日]2021年11月26日
退職理由を言わないのはあり?言いたくない場合の対処法を解説
現在勤めている会社を退社したい時、その後の転職活動に悪影響が生じないよう最大限に配慮すべきであることは、他者から言われずとも誰もが十二分に理解していることでしょう。しかし、現実的には、分かっているのに会社と揉めてしまい、円満退社とは言い難い結末を迎える人が多いのです。退職とは退職願を出せばそれで終わり、という簡単なものではないことが分かります。
会社も離職者も双方が納得のうえで円満退社を成し遂げるには、退職を伝える相手、そのタイミング、会社が引き止めにくい理由の準備の仕方などを繊細に考慮しなければなりません。希望する条件や日時で退職できないという事態に陥らないように、最大限に気をつける必要があります。中でも、会社に退職を伝える際に特に必ずと言っていいほど聞かれるのは、その退職理由です。よって、退職理由についての周到な準備が必要になるでしょう。
退職理由を言わないのはありなのか?
そもそも、退職を会社に伝えるにあたって、その正直な退職理由を明らかにする必要はあるのだろうかという疑問が出てきます。結論から言えば、退職理由を会社に言わなくてはいけないという義務は全くありません。法律上でも労働基準法第二十二条によって、会社が社員を解雇する場合には、その理由を明確に説明する義務がありますが、社員が退職を願い出る場合には、言いたくなければ言わなくても何も問題がありませんし、むしろ退職は労働者の自由を守る権利として保障されています。単に「一身上の都合にて退職を願います」という理由で構いません。つまり、理由を告げずに退職願だけを提出しても、または虚偽の理由とともに願い出ても、会社側が法的に訴えることが可能な根拠は存在していないので心配する必要はありません。
一般的に言っても、退職理由は人によって千差万別でしょう。退職したい本当の理由をそのまま会社に言いたくないというケースも多数存在するはずです。例えば、特定の上司とそりが合わずに衝突を繰り返し、それが退職理由の大半を占める場合には、その退職理由が個人攻撃の様子を呈したとしてもおかしくはありません。しかし、仮に個人に対する恨みや不満を最後に会社や当事者本人にぶつけて辞めるのでは、あまりにも社会人としては幼稚なやり方であると言わざるを得ません。もちろん、パワハラやモラハラと呼ばれるハラスメントを受けている場合に、それを甘んじて受け入れ、自分一人で我慢しながら抱え続ける必要性は全くありませんが、人事部や信頼できる他の上役に相談し、会社としての正当な手続きの下で問題解決を要請することが社会人として求められる正当な行動であるはずです。それでも問題が一向に解決しない場合に改めて退職の意を表しても、あなたは被害者であるという周囲の認識を得て、最後まで堂々と振るまえるでしょう。
しかし反面、その会社自体にいわゆるブラック企業の兆候がある場合は、会社批判や上司などの個人攻撃を退職の理由として正当に主張したとしても、それを退職者の立場や円満退社をおもんばかってくれる材料にしてはもらえないでしょう。少なくとも会社の立場を守るため、退職理由への批判や反論ばかりが主張されるでしょうし、それまでの会社内での貢献や勤務態度を執拗におとしめるような個人攻撃をされ、それが次の転職にとって悪影響になる可能性すら生じます。そういった懸念がある以上は、正直な退職理由を主張することは得策とは言えなさそうです。自分の将来を守るためにも、退職理由は言わない方が賢明でしょう。
また、本当の退職理由を隠し、結婚する相手もいないのに結婚を機に状況が変わったので退職せざるを得なくなったとウソをついたり、引っ越す予定もないのに郷里にUターンするなどとウソをついた場合、これまでと変わらない生活圏の中で、どんなきっかけでそのウソがバレるとも限りません。既に退職できているからバレても大丈夫と思うかもしれませんが、転職先にウソをついて退職したことが伝わった時に、みょうな誤解から新天地での信頼を失う可能性もゼロではありません。ウソをつくということは、それがバレた時のリスクを抱えることでもありますので、すぐにバレそうなウソや、バレた時に自分の信頼や評判を著しく傷つける恐れのある場合は、ウソの退職理由をでっちあげない方が無難であると言えます。このように、退職理由を言わずに辞めるということは法律上も権利として保障されていますが、さまざまな形で弊害が起こるかもしれない可能性をしっかりとシミュレーションしてリスクヘッジを行った上で、最適な形での円満退社の道筋を描けるように柔軟に対処する必要があるでしょう。
退職理由を言いたくない場合の対処法
現実的なリスクを考慮した上で、法律上の権利を有しているからと退職理由を告げずに、もしくは「一身上の都合で」という当たり障りのない理由とともに退職を願い出た場合に、そうした法律の枠組みを超え、会社側が感情的になってしまって退職願いを受理しないと主張する場合も考えられます。または、話す相手を間違えてしまい、法律や社会常識を知らない、または一考だにしない上司に退職理由を言わずに願い出れば、必然的にトラブルになってしまい、望んでいる形での円満退社が不可能になる場合も十分に考えられます。万が一、そのような状況に陥ってしまっても、あくまでも理由を言わずに辞めると意固地になっても、いわゆる会社も当事者も誰も得をしない、両方損の悪手だということです。
とは言え、会社や上司がどうしても理由を言えと迫った場合であっても、そのままを正直に言えばさらなるトラブルが予想される場合も数多く存在するでしょう。例えば、売上のノルマがきつく、毎月精神的に追い詰められていると伝えたとします。現実的には、常軌を逸したノルマ設定や、上司の叱咤激励が度を超えてただのハラスメントになっている場合などは、会社や上司は自らを正当化するために、退職希望者の個人的な能力の低さ故であることなどを言い訳にし、逆に個人攻撃をしてくる可能性があります。
他にも労働基準法を無視した長時間労働を強いられており、ましてやそれらが全ていわゆるサービス残業とされていたり、または逆に何かの懲罰的に仕事を奪われて、毎日出社するもののやるべき仕事を与えられずに時間を潰すことに大きなストレスが生じているなど、現行業務そのものを批判するような退職理由も言わない方が得策でしょう。前述のノルマ同様、会社も上司も保身のための防衛行動を起こし、退職希望者の立場が不利になるような対応をされかねません。
または、職場環境を退職理由として正直に話すことも、避けた方がよいでしょう。例えば、上司とのそりが合わずに衝突することや、上司からの指導がハラスメントになっていること、または職場全体の人間関係が殺伐としておりなじめないことを理由として正直に話しても、そうした数字で証明できないようなあいまいとした理由は、やはり個人攻撃の材料として返ってくるだけでしょう。つまり、人間関係を築けないのは退職希望者が原因であるとレッテルを貼られるということです。
意固地に理由を言わないことも、言わない方がいい理由をいう事も、どちらも円満退社には結びつかなさそうです。バレた時に信頼を損なうようなウソをつくこともリスクが高そうです。そこで、退職希望者がとるべき対処方法は、あくまでも前向きな理由を伝える、または自分の力ではどうにもできない回避が不可能な理由を伝えることが最適な方法だと考えられます。例えば前者であれば、「新しく自分がやりたい仕事を見つけたので、積極的にチャレンジしたい」という理由を伝えればよいのです。
資格を取るために勉強する時間を確保したいという理由でもいいでしょうし、こういうキャリアアップを考えていると、今の会社では絶対に実現できない可能性を示唆することも効果的でしょう。つまり、自分がステップアップするためには今の会社にいてはかなわないということを理由にすれば、個人の夢やキャリアアップを妨害するようなことはできませんので、その理由は受け入れざるを得ません。バレて困るウソではありませんし、かたくなに隠さなければならない理由でもありませんので、理由として通りやすいですし、切り出しやすくもあるでしょう。また後者であれば、「親が高齢になり介護が必要となった」または「自分自身が体調を壊してしまったため、医者からドクターストップがかかってしまった」など、自分の一存ではどうしようもない事情が生じたために退職せざるを得ないというものです。
業務や人間関係など、現実の不満とは全く関係ない理由ですし、会社や上司には親の介護に反対することも、病気なのに出社を強要することもできませんので、やはり受け入れざるを得ませんし、理由は話したという大義名分も得られます。たとえ内側に会社や上司、職場環境や業務に関する不満が沸々と湧き出していても、それを隠して明るく前向きに夢とキャリアアップを語ったり、深刻な事態の発生による退社を残念がってみせることで、円満退社できる可能性はグンと上がることでしょう。
退職理由を伝える際に注意すべきこと
さらに、円満退社を引き出す必要性は、それによって得られるメリットに大きく関係してきますので、この点をしっかりと意識する必要があります。まずは、退社のあらゆる手続きがスムースに行えるというメリットがありますので、必ず雇用契約書に記載されている一般的には約一カ月ほどの猶予を持って退職願いを出すなど、最低限の決まりも遵守しつつ、周囲との人間関係を最後の出社日までは良好に保ちましょう。
逆に言えば、最もやってはいけないことは、自分が抱えた不満に耐え切れず、例えば上司の顔を二度と見たくないなどと出社せずにフェードアウトしてしまうような行動を取ることです。会社からすれば、無断欠勤を長期間に渡って続けたと主張できますし、最悪のケースではそれを理由に会社が損害を被ったからと懲戒解雇の扱いにされてしまうことも考えられます。自主退社と懲戒解雇では、次の転職活動にも多大な違いが生じますし、退職金や未払いの賃金があればそれも受け取れなくなるリスクも高まります。負の感情に支配されて自分自身を見失い、勢いに任せて冷静な判断ができなくなれば、本来はもらえるはずだったものが懲戒解雇によりもらえなくなってしまいます。不当だと訴えても、懲戒解雇の壁は高いでしょう。
また、退職後の失業保険の受取りにも影響が生じます。会社から離職票という書類を発行してもらえないと、失業保険を申請できないからです。当然、円満退社の体をなしていない場合に、離職票を発行しない会社がほとんどでしょうから、その協力を得られない場合にはハローワークに対応を依頼しなければなりません。しかし、無断欠勤が長期に渡るという事実があれば、その協力もスムーズに得られないリスクも発生します。運よく申請できたとしても、無断欠勤の足かせはつきまとい、受給開始できるまでに何カ月か待たされ、受け取れる期間も短くなり、受け取れる総額も少なくなるでしょう。さらに退職したら自分で国民健康保険へと切り替える必要が生じますが、やはり会社から資格を喪失した証明書を発行してもらう必要があります。無断欠勤を長期間に渡って続けてしまうと、その発行にも支障が出てしまうでしょう。
まとめ
このように、円満退社を勝ち取るメリットは大きく、そのためには退職の手続きをスムースにトラブルなく成し遂げる必要があります。最悪でも懲戒解雇にならないような慎重な行動が要求されます。対会社とはいえ、退職の交渉をするのは人間が相手です。感情を刺激してトラブルにならないように、言うべきことは言い、言わない方がいいことは言わないという戦略も必要です。相手がどう反応するかという想像力を常に働かせ、円満退社をするという目的をかなえるための手段を的確に選ぶつもりで臨みましょう。
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