[最終更新日]2023年9月29日  [記事公開日]2021年7月28日

【例文あり】既卒の志望動機を上手に答える方法教えます

従来の日本における就職に対する常識は、直近10年間で大きく変化しました。終身雇用の価値観が崩れ去ったことが、その大きな転機でした。絶対に金融機関を倒産させないと豪語していた当時の大蔵省は、いくつかの中央と地方の金融機関の救済をあきらめ、これまでとは何かが決定的に変化したことを認めざるを得ませんでした。また、自民党政権下で法整備が行われた結果の非正規雇用の増大は、働き方の柔軟性という名目で多様化したものの、正社員と非正規社員の格差は拡大の一途をたどりました。

劇的に変化した就職事情によって、若者の価値観も独自の変化を遂げ、嫌ならば辞めるという衝動的な行動が目立つようになりました。厚生労働省の近年のデータによると、新卒で入社した新入社員の3人に1人が3年以内に辞めています。企業にとっては、既に社会人としての基礎を経験しており、かつ独自に教育することでポテンシャルを引き出せそうな若者を、転職という形で受け入れることへのメリットも見出されるようになりました。

さらには、大学4年生の就職活動時に、何らかの理由で就職できないまま卒業し、引き続き就職活動を行っている既卒と呼ばれる若者も多くなりました。彼らは一度も就職を経験していない層で、さまざまな理由で既卒になっています。そもそも就活をしなかった、就活はしていたけれども1社も内定を得られなかった、という就活をしたかどうかの差異もあります。また、公務員になりたかったけれども試験に受からなかった、留学した日程の都合上、新卒での就活ができなかったなど、事情もさまざまです。

大企業でも、こうした既卒の若者を採用する動きが見られるようになってきました。その理由は、やはり学生の離職率にも関係しており、組織の年齢構成を保つために20代の採用を積極的に行う際のターゲットに、既卒も含まれるようになったからです。ただし、一度も社会人経験のない既卒がアピールできるメリットはどこにあるかも含めて、採用する側の気持ちを動かす志望動機が必要とされるはずです。

既卒における面接の目的と判断基準

既卒における面接の目的と判断基準

まずは既卒と新卒との違いを知る必要があるでしょう。その違いを踏まえた上で、新卒とはアプローチの異なる志望動機とともに、面接に臨む必要も生じます。新卒であろうと既卒であろうと、最低限に持っているべき礼儀作法や身だしなみについては全く同じです。

就職活動に臨むに当たって、機会ごとの適切なあいさつができるかどうかはもちろん、TPOをわきまえた服装で臨んでいるか、きちんと就職活動のプロセスを理解しているか、また複数の企業を受けている過程においてバランス感覚のある対応を行えるかなど、最低限と言いつつも超えるべきハードルは非常に高い位置にあることでしょう。

そして、既卒はこれらの最低限のマナーや身だしなみに加えて、新卒とは異なるアピールポイントを持つ必要性があります。既卒である理由への説明が求められるからであり、既卒が最も意識すべきは、新卒を上回る就職への情熱と積極性でしょう。企業が求めている人材は、その企業の独自の教育によって成長を遂げられるであろう伸びしろを持った人材です。この時点で、即戦力の採用とは趣旨が異なります。そこで、既卒者がアピールすべきポイントの1つは、この伸びしろをいかに自分が多く持っているか、そしてその伸びしろを最大限に発揮できる情熱を持っているかについてです。

新卒の学生は、この自己アピールの点における画一性にはまってしまう傾向があり、他の学生とどうしても差別化しにくいというデメリットを抱えます。大学生という枠の中で、面接官をうならせるほど飛びぬけた成果を披露できる学生以外は、どうしてもこれまで成し遂げてきたことが似たり寄ったりになってしまうからです。

しかし、既卒者はここで、自分自身が既卒者になるに至った葛藤や挫折をアピールポイントにすることで、新卒との差別化を図れます。一度の挫折によって自分に不足していた点について学び、その経験を糧に、情熱を持って改めて就活に臨めているというアピールは、群を抜いて優秀な新卒の学生であってもできないことです。負の経験を逆手にとって自己アピールに変換できれば、既卒者ゆえの差別化のポイントにできるのです。必ずこの新卒との差異を、志望動機を作成するためのチェックポイントに加えましょう。

志望動機の重要性と聞く目的

志望動機の重要性と聞く目的

日本における就活の前提として、いまだに新卒採用が主流であることは間違いありません。現実的な問題として、既卒ではエントリーすらかなわない企業も存在しているため、応募が可能な数も限られています。新卒や既卒に限らず、就活をしている学生であれば誰でも、その企業への志望動機の提出を求められますが、既卒の就活生は、新卒の学生以上に、その企業から求められるようなインパクトと信頼性のある志望動機を書く必要があるということです。

既卒の就活生は、どうして新卒で就活をしなかったのか、または成功しなかったのかという、企業が当然のように抱くであろう懸念を払拭するという、新卒には必要のないタスクが加わっています。この企業側の懸念を払拭して初めて、新卒と同じスタートラインに立てるという現実を理解しておく必要もあります。すると、自然の流れとして、既卒が書くべき志望動機は新卒のそれとは異なっているべきでしょう。

企業がどうして既卒の採用を検討するかという趣旨を理解しましょう。言い換えれば、企業が新卒と区別して考慮するポイントはどこにあるかということです。企業の人事部が、既卒の就活生が応募できる企業数に限りがあることを知っていることは当然です。そのため、既卒の就活生が、とりあえず可能な企業にはどこであっても応募しているのが実情ではないかという懸念が生まれるのは必然です。つまり、応募者が自分の都合だけで応募しているのなら、採用は難しいから早めに落としてしまおうという流れにつながるわけです。

そこで、既卒の就活生は何はともあれ、この最初の懸念を取り除くことが求められます。既卒になった経緯をしっかりと論理的に説明し、そのマイナスであったかもしれない経験から何を学び、次に生かそうとしているかという、既卒者ならではの導入パートを作成する必要があるでしょう。

さらに、新卒の学生が書いてくるであろう志望動機を上回るような、なぜその企業に入社したいのかという説得力のある動機を語り、短期・中期・長期のそれぞれにおいて、どのように貢献できる人材であるかというビジョンを抱かせる志望動機が求められるはずです。企業が知りたいことはまさにこの点にあり、既卒の就活者が既卒という肩書になってしまったことから何を経験し、それを生かして入社後にいかに活躍できそうかを確認したいのです。

学生時代に行ってきた学術的成果や、社会活動やボランティア活動などの経験をアピールできる新卒は、初めからプラスの経験値だけをアピールできるのに対し、既卒の就活生の出発点はマイナスの経験であるという違いを意識しなければ、既卒であるがゆえの差別化も図れないのです。エントリーシートの限られた枠の中で、新卒以上の情熱とともに志望動機を記入することは、決して容易くありません。

既卒が志望動機を書く上で意識すべきこと

既卒が志望動機を書く上で意識すべきこと

書くべき志望動機のポイントとして、誠実さは常に忘れてはいけない要素でしょう。既卒である現状を少しでもより良く見せようと焦るあまりに、話を盛ってしまう、でっちあげるなどはもっての他で、なぜなら必ず人事部にはウソはバレるからです。常に正直に徹し、不都合に映るかもしれない既卒になった経緯や理由も、隠さずに明確にすることが必須でしょう。

大切なことは、その過去からどのように考えて何を得たかを証明し、どのように今の就活に生かされているかという現状を話し、入社後にどのような人材となって企業の業績に貢献できるかという未来のビジョンを提示することです。決して隠さず、盛らず、でっちあげないという姿勢は貫くべきでしょう。

ただ、正直になればよいのだと誤った解釈をして、何となく既卒になってしまったという表現や、やりたいことが分からなかったから、就活はしたけど内定が1社も出なかったからなどといった、それを聞いても誰一人として得をしない情報をそのままの形で志望動機の説明に使うことは避けましょう。やはり、ネガティブな表現は志望動機にはふさわしくありません。

内定に至らなかった原因を具体的に分析した自分なりの見解を、自分なりの反省と改善点とともに語れれば、難題に直面した際に、逃げずに解決策を導き出せる土台を持っている人材であるという人事部の評価を得られる可能性もあります。決して言い訳にならないように、自己分析と将来へつながる改善点については、何度も自問して確立させておきましょう。

【例文】志望動機の答え方

志望動機の答え方

実際の例文の形にまで落とし込むことで確認します。必ず面接官から聞かれるであろう質問の一つは、なぜ既卒になったのかという理由についてでしょう。前述の通り、受けた企業に全て落ちてしまったから仕方がなく、といった消極的な理由や、何となく過ごしていたら就活の時期を逃していた、やる気が起きなかったなどといったモチベーションの欠如をそのまま回答としても、そこからは誰も何も得られないであろうことは明白です。

そのような決して望ましい結果にならないことが分かっている回答をする必要はありません。どこからも内定をもらえなかった能力の低い人というレッテルを張られたり、やる気のない怠け者であるというイメージを抱かれたりするような言動は控えましょう。企業側は、そうしたイメージの真逆のタイプである人材を採用したいのです。ここに回答のヒントがあります。

例えば「やりたいことがあり過ぎて、一つに絞れないまま、就活を中途半端に終えてしまいました。就職活動における最大の失敗点であると反省し、さらに自己問答を進めた結果、現在の志望動機にたどり着き、自分のやりたい仕事を明確にすることができました。」という回答であれば、無能でも怠け者でもなく、単にエネルギーを集約できなかったというストーリーに置き換えられます。既卒の就活生が、在学中の就活スケジュール管理に不備があったことを反省していることもしっかりとアピールしましょう。

また、卒業後から現在の就職活動を始めるまでの間にギャップがある場合は、その面接官から見れば、空白の期間に具体的に何をして過ごしていたのかも知りたいポイントでしょう。志望動機につなげられる答えの一例です。

「私は学生時代には気が付けなかった本当にやりたい仕事について真剣に考えていた期間中、いくつかのアルバイトの経験を通して模索をしていました。やはり英語を使った仕事をしたいと一念発起し、外国人が多く滞在する北海道のスキーリゾートに住み込みで働いていた時に、外国人とのコミュニケーションに自信も深めました。ですので、英語を使って活躍できそうな御社に入社して、自分のコミュニケーション能力を最大限に発揮して貢献できると確信しました。」

一度はあきらめかけた正社員としての働き方が、将来の自分が活躍できている姿であることに気付けたというスタンスを維持しましょう。

まとめ

再度確認しますが、既卒の就活生はマイナスからのスタートであるという自覚を持ち、その経験を生かして、いかにタフな人材に転換できたのかについて、いつでも証明できるように準備をすべきでしょう。面接官からは答えづらい質問を受ける場合もあるでしょう。その場合も慌てずに、不誠実にならないように気をつけましょう。そのためには、常に正直であり、コミュニケーションのチャネルは広く開けておきましょう。もし、そのための方法論に行き詰ったら、外部の助けを頼ることも良いアイデアです。

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