[最終更新日]2023年9月12日 [記事公開日]2022年9月6日
キャリア支援体制を構築し、学生就職率向上を目指すための対策法
大学で従来行われてきた就職支援は、いまや「キャリア支援」という枠組みで捉えられています。入学後、早期の段階からキャリア教育に力を入れ、実際、それをカリキュラムに導入している大学も多いです。また、「キャリア支援センター」など、学生が利用しやすい施設を設置し、就職活動やその後のキャリアプランに対してさまざまなサポートを提供している大学もあります。
しかし、現状のキャリア支援はまだ十分とは言えません。今後、大学側はどのようなキャリア支援体制を構築していけばよいのでしょうか。
大学側が掲げるキャリア支援体制
インターンシップへの取り組み
国がインターンシップの推進を図って、その基本的な認識や推進の仕方を発表したのは、もう20年以上も前のことです。その推進活動もあり、現在は多くの大学でキャリア教育やキャリア支援に力が入れられるようになるとともに、インターンシップも積極的に実施されています。
たとえば、平成11年度の文部省(当時)実施の調査によると、インターンシップを実施している大学は全体のわずか4分の1強に過ぎませんでした。それが、その6年後の平成17年度の調査では50%を超え、さらにその3年後の平成20年度の調査では全国の大学の6割以上がインターンシップを実施していると回答しています。現在ではさらに増加していますから、国の掲げるその推進の取り組みは着実に実を結んでいると捉えることができるでしょう。
また、インターンシップを単に実施するだけでなく、具体的にどのように実施されているのかも調査されています。インターンシップが授業科目に含まれるのか、また、一部の学生に対してなのか、それとも学部単位や全学での取り組みなのかといった実施形態についてです。文部科学省の調査によると、授業科目として大学全体で実施しているとの回答が最多数を占めました。
なお、短期大学では四年制大学と比べて全学での実施率は低く、学部によって授業科目に取り入れいてるとの回答が多数でした。これは、学生の修学期間の短さによるものと推測されます。
一方、国立大学ではすでにインターンシップが定着しており、ほとんどの大学が何らかの形で取り入れています。それに比べて公立大学では低くなっていますが、文科省の調査では、教育実習や看護実習といった資格取得のためのインターンシップを除外しているのが理由でしょう。それでも、国立大学での実施率は明らかに高いです。
キャリア教育の義務化
次に、キャリア教育が大学で必修科目化されている状況について見ていきましょう。平成20年度の調査によると、すでに多数の大学で入学後の早期からキャリア教育に段階的に力を入れていたことがわかります。その数年後には、正課として授業に取り入れる大学が増え、さまざまな形でキャリア教育が行われるようになりました。では、大学は具体的にキャリアに関する科目をどのように必修科目化しているのでしょうか。
大学全体、および、短期大学においても半数以上の学校が必修のキャリア科目を開設しています。大学をさらに国公立大学と私立大学と分けると、私立大学での開設率が非常に高いです。この10年で、私立大学でのキャリア科目の開設が急増しています。それに比べると国公立大学、特に公立大学ではやや低いです。とはいえ、以前の調査時より、いずれも高い開設率であることに違いはありません。
また、平成23年に大学設置基準が一部改正されました。その改正内容にキャリア支援という文言は見られませんでしたが、それ以降、キャリアガイダンスがほぼ義務化されたと一般的には捉えられています。では、大学では実際にどのような就職ガイダンスやセミナーが実施されているのでしょうか。
まず、実施していない学校からですが、これは国公立大学や私立大学を問わずごく少数です。先にキャリアガイダンスがほぼ義務化と述べましたが、実際にそのように理解されていると考えてよいでしょう。実施形態に関しても、全学での実施が大多数で、一部の学部で学部単位で実施していると回答した大学に大きく差をつけています。どのようなガイダンスやセミナーが実施されているかについては、学校ごとに特色の違いがありそうですが、少なくとも大多数の大学で就職指導が必ず実施されていると言えそうです。
大学が卒業生に対して、卒業後の進路状況を調査することも以前に比べて増えています。日本学生支援機構の調査によると、平成17年度の段階ではわずか半数強でした。それが、平成20年度には早くも85%を超えるまでの伸び率を見せています。今ではほとんどの大学で学生全員に対して卒業後の進路状況の調査が行われているとみてよいでしょう。
なお、平成23年には文部科学省と厚生労働省、それに経済産業省が連携して、大学に対し、卒業前になっても未内定の学生を集中的に支援するようにとの要請が出されました。就職支援をするには、進路状況がどうなっているかを把握しておくことが前提ですから、進路状況調査がほぼすべての大学で実施されているのもうなずけることでしょう。
キャリア支援体制を構築すべき理由と状況
キャリア教育の定義が曖昧である
上記のように、現在ではほとんどの大学でキャリア教育や支援が行われています。しかし、具体的にどのようなことが行われているかについては、各大学で大きな違いがあると言えるでしょう。そもそも「キャリア教育や支援とは何なのか?」という問いについても、答える人によって違う答えになるように、一概に「どのようなことをすればよい」と決めるのは難しいことです。
実際、教育現場では、キャリア教育の必要性を認識していながら、具体的に何をどのようにすればよいのかわからないという意見は多いです。キャリア教育や支援について語ろうにも、お互いに共通する解釈がないわけですから、それがリアルな意味での普及を妨げているのかもしれません。
キャリア教育に携わる人材の不足
また、キャリア教育や支援のみを専門に活動できる人材が少ないのも課題です。先に見たように、今ではほぼすべての大学でキャリア教育や支援が行われているわけですが、そのうちそれを専業にしている教員や職員はどれだけいるでしょうか。大学では、おそらく「キャリア支援センター」などの施設の職員が中心的に学生のキャリア支援に関する仕事をしているはずです。
しかし、こうした既存のキャリア支援センターと呼ばれるものは、卒業生の就職率や就職先などで就職実績を高めることが目的の組織なのではないでしょうか。キャリア教育やキャリア支援というより就職支援と言った方が適切でしょう。
ちなみに文部科学省によると、キャリア教育とは「社会的、また、職業的に一人一人が自立できるよう、それに必要な態度や能力を育みながらキャリア発達を促進する教育」とされています。解釈が分かれそうですが、少なくとも就職実績を上げるための就職支援とは異なるはずです。
要は、現状の大学でのキャリア支援とは、就職実績を上げるための目先の就職支援が中心になっているということです。これを課題と捉え、学生一人一人の長い人生を考えたキャリア支援体制を構築したいという方も少なくないとは思われますが、それに専念できる人材が少ないのが問題ではないでしょうか。
インターンシップだけでは不十分
企業はキャリア教育やキャリア支援が主目的ではないことは気に留めておきましょう。大学もキャリア支援の重要性、現状の課題は理解しているため、学外の就職や教育に関する企業等のサポートを利用しようとしているところは少なくありません。しかし、キャリア教育やキャリア支援をメイン事業とする企業は少なく、それゆえにすべての大学に行き渡っているとは言い難いです。
民間企業において学生がインターンシップを経験することも、キャリア教育の一つの方法です。実際、大学生だけでなく高校生も含め、学年を問わずインターンシップの学生を受け入れる企業は少なくありません。それはとてもいいことですが、一つ注意しておかなければならないのは、インターンシップの受け入れは企業にとって大きな負担だということです。
おそらく多くの企業でインターンシップの受け入れを担当するのは、新卒採用の担当者ではないでしょうか。しかし、そもそも業務量が多く負担の大きい新卒採用のための業務に従事しながら、インターンシップの受け入れにも力を入れるというのは無理があります。
当の担当者は学生と接する機会が多いため、その必要性や重要性を十分認識していることでしょう。しかし、わかっているからといって、インターンシップの受け入れに全精力を注げるわけではありません。その結果、インターンシップを利用できる学生は限定され、希望しても参加できない学生がどうしても出てきてしまいます。
キャリア教育やキャリア支援をメイン事業とする企業でない限り、インターンシップの受け入れに積極的な企業であっても、それは企業の主目的にはなりません。ということは、やはり大学側がしっかりキャリア支援を行うための体制を構築するしかないという結論に至るでしょう。
キャリア支援体制を構築する際の見直しポイント
学校外のキャリア支援を受け入れる
大学がキャリア支援体制を構築するには、大学内だけでなく学校外の人材にも頼る必要があるでしょう。もともと大学という場所は、民間企業を経験した人材が少ない環境です。もちろん最近の大学はそうではなくなりつつあるのですが、それでも一般企業のことを詳しく知っており、社会でのキャリアパスまでしっかり学生に伝えられる人は少数ではないでしょうか。
となると、知見を備えた外部の人材に頼る必要があります。具体的にどのようなカリキュラムがよいのか、どのように学生に指導するのかといったことも含めて、積極的に外部の人材に依頼するべきでしょう。ただし、外部の人材に頼りきりでは、大学内に知見やノウハウが蓄積されません。学内にしっかりキャリア支援体制を構築するためには、外部の人材は可能な限り活用する一方で、学内にしっかりナレッジを蓄積できるよう検討する必要があります。
卒業生のキャリア支援体制を整える
なお、最近の問題に「就職できない若者」の問題があります。就職したくないわけではなく、就職したいにもかかわらず就職できないという若者たちです。実際、大学を卒業してもどこにも就職が決まらず、アルバイトなどで食いつなぐだけでキャリアのことなど考える余裕がない若者は少なくありません。大学はそういう人たちの支援も視野に入れてキャリア支援体制を構築するべきでしょう。
たとえば、大学は在学生だけでなく、卒業生にも在学生と同様の支援を行うというやり方です。卒業から3年程度、キャリアコンサルティングや就職先の紹介などを在学時と同じレベルで受けられるようにするなど、いろいろやり方は考えられるはずです。こうした体制が整えば、就職が困難な状況でのセーフティーネットとして機能するのではないでしょうか。
また、最近ではリカレント教育も注目されています。学ぶ意欲がある限り何度でも学び直す機会を与えるのがリカレント教育の肝です。大学がその機会を広く社会人に提供することで、企業の持つキャリア育成の機能を補完することにもなるのではないでしょうか。
まとめ
どの大学もキャリア教育やキャリア支援の重要性は理解しています。具体的な取り組みに力を入れる大学も少なくないでしょう。しかし、多くの大学が、自校の就職実績を上げるための就職支援や就職先紹介にとどまっているのではないでしょうか。これでは、本来の意味でのキャリア教育やキャリア支援として不十分です。
学生が今後の長い人生をどのように生きるのか、その決定を自立的に行えるようにサポートするのが、本当のキャリア支援ではないでしょうか。そのためには、現状の体制を見直し、外部の知見も有効活用しつつ、学生が本当に選びたい選択肢を選べるように支援できる体制を構築していく必要があります。
弊社ジールコミュニケーションズでも、学校・キャリアセンターと提携した就職支援に取り組んでいます。様々な形のサポート体制をご用意していますので、ぜひご相談ください。
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