[最終更新日]2023年9月11日 [記事公開日]2022年9月22日
優秀な新卒を他社に取られたくない!そんな人事に向けた対策コラム
採用担当者にとって、新卒応募者の内定辞退は悩みの種です。もし辞退の申し出があれば、オワハラを行わずに見送り、企業イメージを保つことが必須です。本記事では、「優秀な人材を他社に取られたくない」という方におすすめの対策や対応方法を解説します。
新卒採用事情
2022年の採用活動においては、オンライン採用の導入状況が昨年よりもさらに高まっています。ある人事情報企業のアンケートによれば、「新卒採用活動に関して全くオンライン化していない」と回答した企業は8.7%に留まり、9割以上の企業が何らかの形で新卒採用活動をオンライン導入していることが判明しています。
オンライン化の内訳としては、特に人の多く集まる説明会をオンライン化した企業が85.9%、面接が75.2%と高く、それに対して、内定(最終選考)は20.9%、適性検査・能力検査は49.5%と、比較的低めの割合に留まっています。オンライン化が急ピッチで普及していった一方で、まだ最終的なフェーズにおいては対面を重視している企業が多いことが窺えます。
一時期は社会不安もあって減少傾向だった求人倍率の低下にも歯止めがかかり、新卒採用市場の流れ自体は落ち着きつつあります。2021年卒から大きく縮小していた採用活動も、2022年卒ではゆるやかに拡大し、春以降は均衡状態が続いていく見込みが予測されています。
オンライン化を含め、企業側にも「新しい生活様式」ならぬ「新しい採用活動」が浸透しつつある今となっても、企業にとって変わらぬ悩みの種となるのが「就活生による内定辞退」です。複数の企業から内定を受けた就活生が元々本命だった企業を選ぶ、もしくは選考中に思う所が生じてしまったなどの様々な要因で、企業からの内定を辞退することです。リクルートキャリア社が実施した、新卒採用における内定辞退率調査では、年度別で見れば内定辞退率はやや減少傾向となっていますが、それでも11月~12月頃には毎年内定辞退率が60%を超え、その理由自体は各リクルート企業や大学内アンケートなどで判明しています。内定辞退の理由が解明されていないわけではないのに、なぜ毎年、内定辞退が発生してしまうのでしょうか。
大きな理由として、「昨今の大学受験における『滑り止め』の概念が就活においても適用されている」ことが挙げられます。就職活動において、「就活生はとにかく数多く就活をすること」が内定獲得に繋がると推奨されており、裏を返せば「多く受けなければならないほど落とされるから」という実情があります。本命の企業の内定を待つ間、滑り止めの企業を数社受けて、内定を獲得しておくことが一般的な就職活動となっています。その滑り止め枠になってしまい、内定辞退をされる企業側にとっては悩ましい問題ですが、「何も改善点がわからないまま簡単に落とされてしまうから、たくさん受けなければならない」という就活生側の不安を考えれば、無理からぬ問題でもあります。
中には、面接時に「ここが第一志望ですか?」という質問をする面接官も居ますが、正直に「いえ、第二志望です」と正直に言える訳もなく、また実際に第一志望だったとしても、採用が確定されるわけでもありません。特に、ネット社会となった今では、従来では比較的クローズドだった面接現場や内定辞退時における採用担当者の言動、特にパワハラや威圧的、脅迫めいた対応をした時の言動が、SNSを通じてメディアに告発・拡散され、企業イメージ低下に繋がるケースも少なくありません。
就活生側がセンセーショナルに「弱い立場」で描かれることもある一方で、「内定辞退の連絡すらなく音信不通になる」「入社直前に辞退される」といったサイレント辞退のケースも見られます。これもまた、「内定辞退の連絡をすると罵倒されるケースがある」という一部企業の悪評あってのことですが、手厚く内定者へのフォローを行っていた企業に対しても、そして積極的に企業イベントに参加していた就活生であっても、サイレント辞退をするケースもあります。
こうしたケースが続けば、企業側は新卒採用への不信感で間口を絞り、就活生側は間口が狭くなったのでますます「滑り止め」を多くするという、悪循環に陥ってしまいます。この悪循環に歯止めをかけるには、まず社会的に立場のある企業側が無理な囲い込みや脅しをすることなく、「内定した新卒を入社までフォローする」という姿勢を見せる必要があります。
優秀な新卒を他社に取られないための対策法
よほど念願だった第一志望の内定を得た就活生はともかく、複数の内定の中から「選ぶ」段階の就活生においては、その企業に対しての理解度が入社の決定打となります。元々その会社を数ある会社の中から選んだからには、その会社に「ここでも働いてみたい」というイメージを持っての就活であったはずです。明らかに面接官や人事担当者の態度が悪かった、企業が内定後に炎上し、イメージが低下してしまった等の決定的な出来事がなければ、就活生にとっては悩ましい選択肢として残っています。そこから内定辞退へと至るには、事前情報から企業に抱いていたイメージが、会社訪問や面接等で理解を深めていくにつれて、ギャップが生じてしまうことも要因です。
これは特に早めに内定を得た新卒に多く、すぐに入社できないことから「他に自分に向いた企業があるのでは?」「ここで本当に良かったのか?」と、ネガティブな不安を抱いてしまうことがあるのです。不安を解消できないまま社内イベントや内定者研修に参加し、そこでさらに何か気にかかることが起きてしまうと、「ここでやっていけるだろうか」という不安が強まり、ついには内定辞退へと至ってしまいます。優秀な新卒を他社に取られないためには、内定者が抱きがちな「私はここで本当にいいんだろうか」という不安に対し、「私たちはあなたにここで働いて欲しいから内定を出した」という具体性のあるフォローを行い、入社までサポートし続けることが理想です。内定を無理に引き留めるのではなく、内定者の入社意欲を高めていくというアプローチです。
こうしたサポートについて特に成功している企業の事例を参考にしてみてください。「ネット社会だからこその手軽な繋がり、オンラインでいつでも気軽に相談できる、不安や疑問を伝えられるツール・アプリを用いて、内定者同士や採用担当者が繋がるようにする」「内定者同士の懇親会を行う」「内定者と社員の交流会を行う」などが挙げられます。「なぜ自分が内定をもらえたのかわからない」という不安を抱く内定者に対し、専用サイトにログインすることで、自身の面接時の印象や採用のきっかけとなったエピソードなどを閲覧できるように試みている企業もあります。
「何か不安はありませんか」と採用担当者が聞いたところで、まだ信頼して良いかどうかわからない人間に対し、正直に不安を抱えていることを言える人間は、一般的にそうは居ません。ですから、「特にありません」という言葉を鵜呑みにしてフォローを打ち切るのではなく、定期的に連絡し、「疑問や心配事があったら何でも、いつでも聞いてくださいね」という一言・姿勢を保ち続けることこそ、内定者の不安を解消する一歩となります。
オワハラに注意?新卒への対応の仕方を考えよう
2015年ごろから表面化して問題視されてきた、就活生に圧をかける活動の多くは、現在「就活終われハラスメント」、通称「オワハラ」と呼称されています。内定を出した就活生に対し、他社の選考辞退を強要する、入社承諾書を提出させる、内定辞退に対し、損害賠償や「あなたの大学からもう採用しない」など脅す行為なども、実際に存在したオワハラです。わかりやすい恫喝や束縛といったケースが多いものの、採用担当者フォローもまた、一歩間違えると、このオワハラに該当してしまうケースがあります。
例えば、「内定者の集まりを過度に実施する」「大規模な就活イベント日に被らせる」ことです。内定者フォローとして一般的な内定者同士の集まりですが、頻繁に集めることで、就活日程をブッキングし、他社への就活を意図的に、あるいは意図せず阻害し続けてしまう行為は、「束縛型オワハラ」と言われています。また、大規模な就活イベントと内定者同士の交流会はオンラインで行われるようになりつつありますが、その二つを同時に参加するのは難しいものです。内定者の活動を阻害しないように、同業種の大規模な説明会日程をチェックした上で、交流会の予定を立てましょう。また、これを回避したいがために就活生のスケジュールを無理に聞き出そうとし、結果として内定者の印象を損ねたケースもあるようです。
「会社の先輩職員、役員との頻繁な食事会の実施」、これは「同情型オワハラ」に該当すると言われています。頻繁な集合は上記の束縛型オワハラと同じ理由で問題となりますが、「こんなに顔合わせたら内定辞退なんてしないよね」「他社に取られたくないからこういう会をしてるんだよ」など、ここまであからさまでなくとも、恩義に絡めた圧を感じさせてしまうケースです。あまりにも頻繁に干渉しすぎる内定者フォローもこれに当たります。
オワハラの形態は様々ですが、表面化していなかったかつてとは異なり、オワハラの存在は既に広く認知されています。就活生側や就活をサポートする大学キャリアセンターでは、オワハラに対して様々な対処法を身につけていると考えておくべきです。
例えば、脅迫型オワハラの代名詞でもあった「早期の内定承諾書・入社許諾書を研修先で書かせる」といった行為について調べると、既にネット上で「法的拘束力はない」という記事が数多く発信されています。内定承諾書を書くことは学生を囲い込む方法ではなく、むしろ「就活生の将来よりも自社利益を優先し、無理やり書かせるオワハラ企業である」という周知に繋がります。そのようなオワハラ行為は就活生を通じて大学のキャリアセンターに伝わり、来年の就活生にも周知されます。結果としてはマイナスですが、これはまだ、その大学からの志望者が減るという可能性でとどめられます。しかし、昨今のネット社会でより恐れるべきは「SNSでの企業名付きの拡散」です。
就活生もSNS上で個人を特定されるのを避けるため、多くは就職活動においてオワハラが発生したとしても情報をぼかすものですが、一度オワハラ情報がインフルエンサーの眼に留まってしまえば、その拡散力は計り知れません。特に感情的に発信されやすいオワハラ情報は、それが本来「問題ない」行為だったとしても、その内容が過度に誇張され、真偽を確かめられないままに拡散、企業特定、ネットメディアによる記事化でさらに拡散される、というケースが十分に考えられます。実際にひどいオワハラが過去にあったからこそ、自身の体験談を彷彿とさせ、拡散に手を貸す人もいるかもしれません。
後に、企業側が調査をし、真実を発信したとしても、圧倒的に拡散されたデマを覆すほどまでには周知されないのが常です。こうしてネガティブな評判が広がること、レピュテーションリスクを負ってまで実施する価値のあるオワハラはありません。
オワハラを起こさない、オワハラだと誤解をされないようにするには、採用担当者の注意だけでは足りません。「役員までに至る、就活生と関わる可能性の高い社員全員に注意点を共有しておくこと」「内定辞退者はスマートに見送ること」、そして何よりも「囲い込むのではなく、入社意欲を高めることを目的とした活動を心掛ける」のが大切です。
まとめ
内定辞退をされないようにするには、オワハラではなく、入社意欲を高めることが重要です。内定辞退をされたとしても、企業の顔として企業イメージを下げない言動をすることは、来年以降の応募者の増加に繋がります。いくら優秀な内定者を他社に取られたくないとしても、現代の就活に内定辞退が付き物なことは、就活生も採用担当者も、本来わかっているはずです。「その後の活動も応援していますので、もし辞退される場合は早めの連絡をお願いします」と伝えるのも、内定トラブルを回避するための歩み寄りの1つです。内定辞退な関する対策のご相談は、弊社ジールコミュニケーションズまでご相談ください。
ジールコミュニケーションズでは、新卒・既卒での就職活動、第二新卒、中途で転職活動をはじめ、企業向けの採用支援や学校・キャリアセンター向けのサポート支援を行っております。豊富な実績や手厚いサポートによってお客様に向き合った支援サービスをご提供いたします。
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