[最終更新日]2023年9月12日 [記事公開日]2022年8月22日
【教育機関向け】学生の就活支援を改善し、就職率向上を目指すための対策法
大学にとって、効果的な就活支援を行い学生の就職率を上げていくことは、学生の将来をサポートするために欠かせないことです。就職率が高いことは学校の大きな魅力の一つとなりますので、より多くの入学生を集めることにもつながります。そのため自校の就職率と全国平均を比べ、現状を知ることは大事です。そのうえで、より就活支援を効率的なものとするために何ができるか、改善案を考える必要があります。
このコラムでは、学生の就職事情と就職率、就活支援を見直すべき状況、就活支援を改善する方法などについて解説します。貴学の就活支援をより良いものにするために、参考にしていただければ幸いです。
学生の就職事情と就職率
コラムの初めにまずは、統計から見える学生の就活事情と就職率について解説します。
大学・高等専門学校の就職率はいまだコロナ禍
文部科学省と厚生労働省が連携して行った調査によると、令和3年度大学卒業者の就職率は95.8%でした(令和3年度大学等卒業者の就職状況調査(令和4年4月1日現在))。これは前年と比較すると、0.2ポイントのマイナスです。新型コロナウイルス感染症の影響にもかかわらず短期大学や専修学校では就職率の改善が見られますが、大学と高等専門学校に限っては、いまだコロナ禍から抜け出せていないと言えるでしょう。自校の就職率をこれと比較し、比較的安定した就職率を出せているのか、それとも大きな改善が必要な状況下なのかを考えることができます。
私立大学の就職率はますます下降気味
こうしたデータはとても重要な指標となり、さらに詳しい数字を見ていくと、学生の就職事情を教えてくれるものです。たとえば、上記のように大卒の就職率は95.8%なのですが、国公立か私立かで分けると、明確な差があることが分かります。国公立大学では96.1% (前年比+0.2)と回復基調であるのに対して、私立大学では95.6% (前年比-0.5)と、ますます下降傾向なのです。このように就職率においては、大学によって有利不利が出ています。それだけに、統計上不利な立場にあるということであれば、さらなる努力が求められることを意識しなければなりません。こうした学校の種類による違いが出ている原因を把握して、その差を埋められるよう適切な対応を取ることも、状況改善には不可欠です。
学生の就職意識が低い
この統計で同時に出された就職希望率を見ると、昨今の学生の就職についての意識が明らかになります。大学全体での就職希望率は76.1%に過ぎません。しかも、これを種類別に見ると、私立大学は85.7%とそれなりに高いのに比べて、国公立大学では56.8%とかなり低い状況となっています。この数字は短期大学や専修学校などと比べても低く、就職を希望する学生そのものが少ないのが一目瞭然です。ほとんどの学校において、この就職希望率は下がっていて、少なくとも企業に正社員として就職するという意欲が下がる傾向が続いていることが分かります。
このようなデータを見ることで、学生たちが抱える就職についての問題の根本にあるものが見えてきます。就職活動がうまく行かないことよりも、基本的に学生の就職意欲が低いのです。もしくは、就職したいという思いはあるものの、自分に合った魅力的な企業を見つけられず、結果的に就職希望率が下がってしまうというケースもあります。いくらキャリアセンターで努力して、質の高い求人情報を確保できたとしても、学生側にその意欲が乏しいのであれば、なかなか有効な就活支援ができなくなってしまうでしょう。学生のモチベーションが就職率に与える影響がとても大きいということを意識して、単なる制度構築に終わらず学生への丁寧なサポートをするようにしたいものです。
地域格差が大きい
もう一つ、同じ調査から見える点として、地域格差が大きく表れているということを挙げられます。地域別に就職率を比較してみると、関東、近畿、九州エリアは就職率が95%を超えていて、前年より数字を伸ばしています。一方で、北海道・東北エリアは93.4%で、前年比で3.6ポイントも下がっています。一番就職率が低かったのは中国・四国エリアで92.2%、前年比で2.3ポイントの減少です。このように、地区によって明暗が分かれているのは深刻な点で、大きな改善が必要とされていると言わざるを得ません。
就活支援を見直すべき状況と改善メリット
ここからは学生の就職率における現状の問題点と、就活支援の改善が可能なポイントについて解説します。
就職率における現状の問題点
こうした就職率に関係したデータにより、就活支援について問題となる状況がいくつも見えてきます。たとえば、就職状況の一極集中もしくは格差が顕著になっている点です。経済情勢や社会情勢が不安定ということもあり、学生はより安定感を求めています。そのため、経営規模の小さな企業ではなく、大きな企業への就職を望む傾向がさらに強くなり、地方よりも都市への就職を考える学生も多くなっています。これは就職率だけでなく、進学率にも影響をもたらしていて、特に地方の大学の経営や就活支援に影を落とす理由となっています。
就職希望率の低下も問題です。雇用の現状としては売り手市場であり、本来であれば以前よりも内定獲得のハードルはかなり下がっています。しかし、そもそも学生が就職をしたいという気持ちを持たなくなっているので、現状に対して就職率が伸び悩んでいるわけです。
もちろん、これには働き方の多様化も関係しています。学生であっても起業することが容易になっていますし、フリーランスなどの形で自分の能力を発揮できる環境も整ってきています。
しかし、正規雇用でなくてもアルバイトやパート、派遣といった働き方で十分、とりあえず生活できるだけの給料を稼げれば十分と考える層が増えているのも事実です。学生の就職についての意識そのものの改善を図るための対応が必要な状況となっています。
就職先のマッチングがうまくできないという状況も見られます。そもそも学生側で、自分がどんな仕事をしたいのかが明確になっていないことが原因と考えられます。同時に、提示される求人の選択肢が狭くて、希望に合った企業や能力・経験を活かせる職場を発見できないという事情も関係しています。特に、都市部や大手企業に限定するなど、最初から就職先を絞り込んでしまうと、どうしても候補の選択肢が減ってしまい、マッチング精度を下げる原因となります。
就活支援によって改善が可能なポイント
こうした学生の就職状況を確認し、キャリアセンターとして改善を図っていくことは大いに可能です。というのも、全般的に雇用状況は悪くなく、しっかりと学生に合った求人を見つけることができれば、就職率はかなり高いものとなるはずだからです。求人の幅を大きく広げることができれば、効率よく就活支援ができるようになります。
それにはまず、学生の意識の変化が必要となります。大手や都市部にこだわらず、本当の意味で自分にマッチした企業を探すという意識を持つことができれば、就活支援は非常に効率が上がるでしょう。もともと大手企業や都市部の企業は競争率が高く、求人紹介をしても成功率が低いからです。一方、地方の中小企業は全体的に競争率が低いので、より成果が出やすく、短期間で採用を決めやすいのです。
就職意欲を高めることを目的とした就活支援も重要になってきます。この面での改善を図ることで、自然と就職率は上昇してきます。メリットはそれだけではありません。学生が積極的にインターンや会社説明会、就職イベントに参加してくれるようになりますので、学生主体の就活が行われることになります。
就職課スタッフには、就労意欲の高い学生へのサポートは短時間かつ少ない労力でも成果を出しやすいけれども、積極性のない学生にはたくさんの時間をかけないといけないという悩みがあります。それだけ非効率になってしまい、時間が取れずに手が回らないという状況に陥ります。そこで、就職意欲そのものを高める取り組みをすれば、キャリアセンターにかかる負担も軽減されるわけです。
学生の経験や能力に合わせて、精度の高いマッチングができれば、それは学生にとって効果的な就活支援となり、質の高い人材を企業に送り込むことにつながります。企業側にはその大学の卒業生からの応募を歓迎する姿勢が生まれ、積極的にインターンシップを実施したり、求人情報を大学に送ったりすることになります。就職についても実績があると良い評判を生み、その評判がリピーターを生むという良いサイクルが生まれるのです。こうした良いサイクルができれば、その後の就職活動がしやすくなります。情報収集をするにしても楽になりますし、採用率が高まる可能性もぐっと広がるでしょう。
就活支援を改善する方法とポイント
具体的には、全国の就職率と関係するデータを見たうえで、自分たちの学校との比較、分析をすべきです。たとえば、関東地区に存在する大学なのに、全国平均程度の就職率であれば、そのアドバンテージを活かせていないことが分かります。地方の大学であれば、そもそも平均的な就職率が低い状況にあることを理解して、その地理的なデメリットを埋めるための取り組みに力を入れることで、就職率を上げられるはずです。それぞれの大学特有の問題や環境について把握して、より効果的な改善策を見出しましょう。
早い段階からキャリア教育に取り組む
就活支援の改善の第一は、学生へのキャリア指導を徹底して行うことです。就活支援を効率を下げる原因の多くは、上述のように、学生側の意識にあります。そもそも就職意欲が低いとか、就職先の希望が偏っている、自分の能力や経験を踏まえたマッチングがあまりできていないといった状況は就職率を下げます。
多くの企業は大学2年生の夏くらいにインターンを開始するなど、かなり早い時期から採用活動をスタートしています。そのタイミングを逃してしまうと、企業について知る機会や採用のチャンスを逃してしまうことになります。学生へのキャリア教育をできるだけ早く行うというのも、意識したいポイントです。
就職率の高い大学の多くは、入学してすぐの段階から、何らかの就職ガイダンスを実施しています。たとえば、インターンや企業からの広報活動開始など、就職活動に関係するスケジュールを教えます。こうした情報に接すれば、学生は自分で思っていたよりもかなり早い時期から就活に動き始めなければならないと気付くはずです。いわゆる学生気分でなく、就職をすることへのイメージを明確に持てるようになります。自然と就職意欲を高めることにつながりますし、自分から何らかの行動を取るように促されるのです。
企業とのマッチングを支援する
マッチングがきちんとできるように、サポートすることも重要です。客観的に自己分析をして、自分の長所やスキル、経験がどのように企業にとってメリットとなるのかを判断してもらうことが肝心です。同時に、自分として考えている将来のキャリアや年収、勤務地といった希望も明確にするように促します。そして、企業がどんな基準で採用を決めるのか、それぞれの業種でどんな人材が活躍しているのかといった点も情報発信しましょう。こうすることで、現実的なマッチングができるようになります。もちろん、情報発信をするだけでなく、個別に学生と面談してヒアリングを行ったうえで、アドバイスをするのも有効な手段です。
求人情報の幅を広げる
キャリアセンターとして提供する求人情報の幅を広げる取り組みも、有効な改善策と言えます。今までとは傾向の異なるエリアや業種、企業規模を持つ企業を新規開拓して、紹介していくのです。学生たちは選択肢がたくさんあることに気付きますし、意識が多様化している学生たちに、広く、適切な求人を提供できます。そのうえで、どんな企業の人気が高いのか、実際に内定が決まりやすいのはどんなところかなどのデータを集めていけば、その大学の特性に合った求人を見つけやすくなります。
まとめ
専修学校までを含めた大学等卒業者の就職率は全国平均で96.0%となっていますが、全体的に就職希望率が低下している現状が見られます。また、地域によって格差がひどくなっているのも現状です。それだけに、それぞれの教育機関が自校で生じている問題を把握して、それぞれに合った改善策を検討していくことが求められます。特に、学生の意識を高め、変化させることを重点に置いた就活支援を行うことが重要です。
とはいえ学生数が多い学校ほど、学生一人一人にきめ細やかな就活支援を行うのは、なかなか難しいものです。弊社ジールコミュニケーションズでは、そうした教育機関と連携し、学生の就活を支援する「学校・教育機関向けサービス」を行っています。学生の就活意識を高める学内セミナーの開催、学生との個別面談など、さまざまな支援が可能です。お気軽にお問い合わせください。
ジールコミュニケーションズでは、新卒・既卒での就職活動、第二新卒、中途で転職活動をはじめ、企業向けの採用支援や学校・キャリアセンター向けのサポート支援を行っております。豊富な実績や手厚いサポートによってお客様に向き合った支援サービスをご提供いたします。
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