[最終更新日]2023年9月25日 [記事公開日]2021年11月26日
逃げの転職という考え方|逃げの意味から考える正しい転職のやり方
多くの若手社員は、自分なりの夢や希望を持って就職活動を行い、入社後も一生懸命仕事を覚えようと頑張っている人がほとんどであると推察されます。しかし、社会人としての経験も少ないがゆえに対処方法も分からない若手社員は特に、仕事でつまずくことなど日常茶飯事です。
ただでさえ悩みが多い時期でもあり、仕事における失敗や伸び悩みなどを苦にして、「この仕事は自分には向いていないのでは?」と自問することも多々あることでしょう。または、自分自身の問題以外でも、上司のパワハラやモラハラなどのハラスメントにさらされている毎日に嫌気がさして辞めたくなっても不思議ではありませんし、職場がいわゆるブラック企業と呼ばれてもおかしくない長時間の過酷な労働環境であるなら、体調を崩して通院などしていれば、退職してでも休息を取る必要性に迫られても致し方ありません。
そのような精神的にも肉体的にもつらい状況の渦中で転職を考えた時、それを逃げの転職であるという批判に果たして正当性はあるのでしょうか?
逃げの転職という考えはありなのか?
もし、あなたが今自分ではコントロールしかねるような過酷な職場環境に身を置いていて転職を考えているなら、それは非常に幸運なことと言えるかもしれません。なぜなら余りにもつらい精神状態のままで日常を過ごしていると、自分自身の気持ちと体調に過度な負荷がかかっていることにすら気が付けないことも、多くの場合において起こり得るからです。仕事は人生における重要な要素であることは間違いありませんが、同時に人生のほんの一部であることも事実です。しかし、人間は精神的に追い詰められ、睡眠障害や摂食障害に陥って健康を害するようになると、正常な判断が不可能になっていきます。
つまり、逃げるという発想すら浮かんでこなくなってしまうのです。最も最悪なケースは、いわゆる追い詰められての自死も含む過労死という結末です。これまでの日本において、何件も同様の事件が発生しています。関係のない人々は、なぜ死を選ぶくらいなら会社を辞めないのかと疑問に思う人が多いかもしれません。しかし、辞めると言えばまた怒られるかもしれない、批判されるかもしれないという恐怖心から、退職や転職を言い出せなくなることは既に周知の事実です。上司によっては、その選択肢を意図的に奪うような追い詰め方をする人もいるくらいです。こうした最悪のケースに至る前に、自分の命を守るという最低限の行動の一つが転職であるならば、それは逃げという概念とは全く異なる前向きな自己防衛行動であることが分かるはずです。
よって、自分でまだ判断ができる状態で、現状がこれ以上悪化するのを阻止するために転職することは逃げではありませんし、むしろ前向きに考えるべきです。転職理由として特に多い理由の一つが「人間関係がうまくいかないから」というものですが、自分自身は変えられても他人を変えることはほぼ不可能であるという認識に立てば、今後数年、または十数年という長い時間において、ストレスのかかる人間関係の中で過ごすことを自分に強いる必要が果たしてあるのでしょうか。どこに転職しても完璧な人間関係など望める術はないという意見も正論ですが、少なくともましになる可能性がある以上は、それを逃げであるという結論に結びつけることはできません。
また同様に、日本のことわざで「石の上にも3年」と言いますが、ある程度の期間も我慢できずに大成するはずがないという意見は、一見すると正しく思えるかもしれません。しかし、それは成長できる環境においてという前提があればの話しであって、もし他の職場環境であれば同じだけのスキルアップをもっと精神的に楽に、より短時間で成し遂げられる可能性があるのなら、同じ3年という期間をさらに有効に使う方が賢明であると言えるでしょう。そうした意味からも、ただの我慢は3年経っても何も生みませんので、転職などでより良い環境に変えて3年を有意義に過ごすことは逃げであるどころか、より建設的で前向きな考え方です。
「逃げ」から考える転職の正しいやり方
逃げではない転職とはどのような転職を指すのかと定義することも、さほど難しいことではありません。そもそも転職すると言っても、その背景や動機、転職後の苦労や成功など、あらゆる面で千差万別であり、正しい転職という定義自体があまり重要ではありませんが、強いて言えばつらい職場環境から脱却し、自分が精神的にもリラックスできて実力をより発揮できるようになれば、それは正しい転職であると言えるでしょう。
最も重要なことは「逃げ」という概念から解放されることです。精神的にも肉体的にも苦痛を伴う職場から、より良い職場に籍を移すことは「逃げ」ではなく「賢い選択」です。それを逃げと言い張る人は、部下が辞めると自分の考課が下がるかもしれないので脅してでも翻意させたい上司だけだと考えましょう。そんな人間的に尊敬できかねる上司の体裁を保つためだけに、自分の大切な命と時間を犠牲にする理由がどこにあると言うのでしょう。まずは、どのような理由があるにしろ、「転職=逃げ」であるという方程式を一掃することです。全ての転職活動は、ここから始めるべきでしょう。
そして転職とは自分自身がキャリアアップをしていく上で欠かせないものという定義が加われば鬼に金棒でしょう。強いて正しい転職とは何かと問われれば、それはひとえに自分自身がキャリアップを図れる選択であると集約できるでしょう。社会人としてのキャリアは数十年という長い期間に渡って続いていきます。その時系列の流れの中では、同じ職場に留まって、全く同じ顔触れに囲まれながら、同じような仕事をこなしていくということの方がまれなケースであるはずです。なぜなら時世は常に移ろっていくからです。これまでのビジネスモデルが新しいテクノロジーやサービスの出現によって、一瞬で陳腐化していくことも珍しいことではありません。
変化の激しいIT業界やエンターテインメント業界だけにとどまらず、重厚長大といわれてきた老舗企業であっても、その時々のニーズに応えられなくなっていけば、石炭業界が滅びていったように生き残れないものです。デジタルカメラの普及で需要が消滅したフィルムメーカーが、どのように業態を変えていったかの変遷は非常に参考になる事例です。転職とは、このような時の流れに取り残されないように、自分の知識やスキルをアップデートさせながら進化し続けるための一つの手段です。
そのためには変化を怖れるのではなく、変化を楽しめるくらいの心の余裕が必要です。常に何かに追い立てられておびえながら業務をこなしている状態で、新しい変化に気付き、興味を持ち、自分の知識とスキルを適応させていくことなど不可能です。そうした意味からも、転職はどんな背景があろうと、決して「逃げ」などという後ろ向きな選択肢ではなく、前向きで未来志向の方法論であると定義すべきものです。
「逃げ」からの転職を成功させる方法
その上で、せっかく転職するのですから、ただ単に職場環境をより良いものに変えるというだけでなく、確かなキャリアップとして、ポジションも給料もレベルを上げていくという未来志向も重要な要素です。新しいことを始めるには、高いモチベーションと目標がなければ難しいものです。転職するにあたっては、緊急避難的に転職する必然性があった場合でも、落ちついた頃にはもう一度改めてこの転職で成し遂げたい目標を設定しなければ、前向きな姿勢に修正することも難しくなってしまいます。退職した過去の会社でのできごとを引きずらずに、フレッシュな気持ちに切り替えて自分が何を成し遂げたいかを考えましょう。そのためには、やはり転職先の業界や業種については、自分がやりたいと志望しているものであるという条件が前提でしょう。そうでなければ、モチベーションを高めてキャリアアップへつなげる転職にすることも困難になりかねませんし、転職を希望する先の企業からも良い返事はもらえないはずで、そもそもの転職活動が成功しにくくなります。
そうしたモチベーションの設定や、自分はどの業界でどのようなキャリアを積んでいきたいのかについて迷いが生じたら、その時は転職エージェントに相談するのも1つの手段として有効です。転職エージェントでは、一般的に転職のスペシャリストである担当者がコンサルタントとして相談に乗ってくれますので、現状を説明し、これからやりたい、または興味のある分野について、一貫したアドバイスを受けることが可能です。
上司のハラスメントや現在の職場の労働環境を一刻も早く変えたい場合であっても、プロである転職エージェントのコンサルタントが、最短での転職が可能な道筋を示してくれるはずです。転職先の候補となる求人を紹介してもらい、準備すべき書類を過不足なく準備し、志望動機などの転職希望理由を明確にし、スキルと知識の棚卸しを行って自分の強みと弱みを分析し、面接の対策を練り、転職先企業との条件交渉の代行を依頼するなど、転職活動に関わるあらゆる工程のアドバイスを期待できます。それによって、実際に転職すると心を決めてから内定を勝ち取れるまでの期間を、自分1人で取り組むよりも非常に短い期間で実行できるはずです。
そして1つ忘れるべきでないのは、物事には全てにおいて良い面と悪い面の二つの側面が同時に存在するということです。転職が100%良いかと問われれば、それも時と場合によります。精神面と健康面において危機的な状況にあるのであれば、今すぐにでも転職すべきタイミングですが、自分の市場価値を見誤ると、キャリアダウンにつながる可能性もあります。つまり、今の職場がその業界では既に高い地位にあり、そこでの経験が今後の自分の市場価値を高めるのであれば、すぐに転職をするよりもあと何年かの経験を重ねる方が、長い目で見れば得策である場合もあります。現状認識と将来の展望を考慮せずに、感情に任せて転職することがデメリットになることもありえますので、余力が少しでも残っているのであれば冷静に長い目で再考するステップも必要です。
まとめ
結論ですが、まず「逃げ」という言葉を使う人は、あなたに会社を去ってほしくない事情を抱えている人だけだと考えた方が良いでしょう。つらい人間関係やブラックな職場環境を抜け出して、より条件の整った他社へ転職することは「賢い選択」であって、「逃げ」ではありません。それを「逃げ」であると定義する人は、退職希望者に罪悪感などのネガティブな感情を抱かせて、何とか去られないように画策しているだけであると割り切るべきです。
本当に心から心配してくれる人や親身に考えてくれる人は、転職を悪だとは言わないはずです。日本の従来の終身雇用が根付いていた時代では、転職は会社を裏切る悪行とされてきましたが、非正規社員が全体の3割を超えている今の現状では、そうした古い価値観に縛られる必要も一切ありません。転職とは、あくまでもキャリアアップのための前向きな手段であって、「逃げ」とかそうではないといった切り口でとらえることすら止めましょう。あくまでも転職を決断するための根拠は、キャリアアップにつながるかどうかという、未来の展望を描ける場合に限って行う冷静さが求められます。
もちろん、退職しないと心身ともに衰弱してしまうリスクがある場合は例外ですので、迷わずに退職することをお勧めします。そしてまだ余力がある場合は、自分の市場価値を上げることや、給料のアップを期待できる、または自分のやりたい仕事ができるといった、キャリアップにつながる明確なビジョンを描けている場合に限って、転職エージェントなどのサポートも受けながら前向きに転職を選択することをお勧めします。この2つの原則に則って退職と転職を考えることが、何よりも重要なことでしょう。
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