[最終更新日]2023年9月27日 [記事公開日]2021年7月30日
既卒はいつまで新卒扱い?既卒が行う就職活動の実態を解説
高校や専門学校、大学での就職活動が希望通りに進まずに、それで新卒時に就職しないという人は少なくありません。希望の就職先で採用試験に受からなかったケース、学校を卒業した後でも人生の進路を決めかねているケース、家庭や個人的な理由があって就職を見送るケースと、既卒者として数年間過ごすことはそれほど珍しくありません。
ですが、いよいよ進路を決定して就職活動を始めることを決心した方は、ふと卒業後の空白期間(未就職期間)のことを心配するかもしれません。採用面接などで、面接官に『なぜ未就職になったのですか?』『この空白期間に何をしていましたか?』と質問されたら返答に困ってしまうと悩んでしまうこともあるでしょう。
ここでは、既卒とはどういう状態か、既卒者の就職活動の実態や既卒就活を成功させるポイントは何かについて詳しく確認していきます。
既卒はいつまで新卒扱いになるのか?
まず、既卒の定義を明確にしておきましょう。既卒(既卒者)とは、学校を卒業した後、一度も就職経験のない状態を指す言葉です。既に卒業したが、そのまま社会人経験を持たない状態だという意味で既卒という造語ができました。
既卒者になる原因はさまざまで、高校や専門学校や大学の就活時に自分の望むような就職先に採用されなかったとか、卒業時になっても就職する気持ちにならない、もっと自分の将来についていろいろと考えたい、漠然と社会人になる決心がつかない、病気やケガのせいで就活ができなかったなど、個々の理由があります。
それで、卒業後は全員が即就職するという、日本独特の慣例から少し外れてしまうことになりますが、そういった選択や人生の進路はまったく個人の自由で問題はないでしょう。実際に欧米諸国などでは、大学を優秀な成績で卒業しても、すぐ就職せずに世界を旅してまわったり、個人的な研究に没頭したり、自分の能力を磨くために更に勉学にいそしんだり、温めてきた個人事業を始める資金集めのバイトをするなど、卒業後の選択肢はかなりバラエティに富んでいます。つまり、卒業後に就職しなかったことで将来に不利益を被る心配はあまりないのです。
一方で、日本や韓国では年功序列で収入や出世が影響を受けるため、既卒者は就職する際にハンディを抱えてしまうリスクがあるのは事実でしょう。
その点については後に詳しく説明するとして、厚生労働省が平成22年(2010年)に改正した青少年雇用機会確保指針で、既卒者については次のように定めています。『大学卒業より3年以内であれば、就職においては新卒社として扱うこと』として、この点で就職条件に差別がないように通達しています。
それを受けて、多くの企業が既卒者と新卒者を同等に扱うことを前提に採用するようになりました。ただし、現状ではまったく同じ条件で就職できるとは限りません。やはり評価・査定の部分で既卒であることをマイナス評価するケースがあります。企業の意見としては、本人の資質や能力、既卒の原因を考慮して判断しているに過ぎないとのこと。あくまでも本人を評価しての結果ということで、一概に既卒者が就活に不利ということではないのも確かでしょう。
このことは、新卒で就職して3年以内に離職をした第二新卒者にもあてはまると言えるかもしれません。新卒で就社し、1年から3年間頑張って働いた人が、やはりこの会社ではなかったと離職する場合でも、行政ではこれを第二新卒と定義して新卒と同じような条件で雇用するように指導しています。社会人初心者である新卒者が一度や二度の選択ミスで、将来的に不利益をこうむるのは理不尽だというのが行政の意見です。
ですが、第二新卒者も既卒者同様に、実際の就活シーンではやや不利な状態にあるでしょう。第二新卒者は職務に対する責任感や積極性、会社への貢献という面ではマイナスの評価を受けがちです。雇用側にしてみれば、また早期に退職してしまうとの懸念があって、慎重に採用の判断をすることでしょう。
一方、既卒者の採用も手放しで新卒扱いできない事情があります。既卒者は消極的な人間だと判断されることもありますし、会社の和・チームワークにプラスにならないと評価されることもあるからです。
ですが、一方で多様な個性を取り入れて、会社を活性化させるために第二新卒者でも既卒者でも積極的に採用している企業がたくさん見られます。第二新卒者は、数年間とはいえ現場経験の実績と、それに伴う知識・スキルを持っていて、新卒者よりは戦力として働けます。この点を考慮して、大手企業では積極的に採用するところも増えています。
また、既卒者は将来性が未知数である点を新卒者同様に評価する場合があります。まだ手垢のついていない人材ですから、社内指導に従順に応じる可能性が高いでしょう。しっかりと会社色に育て上げられるメリットがあります。ちゃんと育て上げられれば、会社にとって大きな財産となるので採用する価値は十分に高いのです。このように、就活方法によっては好条件の就職先をとらえるチャンスがあるということになります。
既卒を新卒扱いしてくれる企業の特徴と目的
そこで、既卒者の方の就活では、なるべく既卒者を新卒扱いしてくれる企業を見つけてアプローチすると良いでしょう。先にも述べた通り、厚労省が卒業後3年以内の既卒者を新卒として扱うように指導しているので、その要望に応えている大企業や中堅どころの成長企業が狙い目になります。
反対に言いますと、キャリアやスキルのない人が大企業の採用選考を受けられるチャンスは新卒者と既卒3年以内までの人に限られると言ってもいいでしょう。付け加えるならば第二新卒者もこの中に入ります。このチャンスを利用しない手はありません。
では、既卒を積極的に受け入れている企業をどう見つけるかですが、それにはちょっとしたコツがあります。既卒者の利用価値を明確に定めていて、目的をもって採用を進めている企業の傾向を確認することができます。
まず大手企業ですが、行政の指導を積極的に受け入れる姿勢を見せる必要があります。とくに東証一部上場レベルの大企業は、社会貢献をアピールする点で躊躇がありません。政府が取り組むことを下支えするならば、国の企業評価が上がりますし、社会的にもイメージアップとなるでしょう。
また、大企業は少子高齢化で人材確保が難しいという問題を抱えています。若い人材は特に必要ですから、新卒ばかりでは十分な人材確保ができていない現状があります。既卒も第二新卒も併せて、積極的な採用活動を進めているのです。
自動車メーカーの大手8社に電子機器メーカー、食料・飲料メーカーや鉄鋼・金属・重工メーカー、製薬メーカーの名だたる大手企業が、既卒者の積極採用に実績を示していることを知っておいてください。
また、金融関係やIT企業も同様で、中堅どころの企業やベンチャー、スタートアップ企業でも既卒者の採用は少なくありません。中小の企業でもやはり人材確保は目下の問題です。とくに新規でスタートした会社の中で、急成長を遂げているところは人材確保に余念がありません。規模拡大のためには新しい人材が不可欠です。そこで新卒として安い費用で確保できる既卒者の採用も多いです。
コロナ禍で消費スタイルが変化していて、ネット事業の中には事業を急拡大させている分野が多数あります。そういったところの求人を的確に見つけていけば、好条件での就職も可能でしょう。
また、慢性的に人材不足の企業でも既卒や第二新卒者の門戸が広いでしょう。少子化による影響が顕著な地方の会社では、新卒ばかりを狙っていてはとても人員の確保が難しいことがあります。一次産業や二次産業の現場では、高齢化が進行していて、喉から手が出るほど若い人材を求めています。テレワークなどの働き方が可能な現在、地方での雇用も候補に入れてみると良いかもしれません。
既卒として行う就活の実態
これまで、既卒者の就職の可能性をいろいろと述べてきましたが、ここで実際の就活の状況について確認しましょう。
現状の就職状況を見ますと、やはり既卒の採用率は新卒と比較して低いと言わざるを得ません。大手の就職斡旋サイト・マイナビの調査によりますと、2020年度の既卒者の内定率は34.4%と、この数値は新卒者の半数にも及ばないということになりました。コロナ禍による影響が強い年度であったことは否めませんが、それ以前のデータでも新卒者との差は大きく開いています。つまり、高卒・大卒などの定例就活では、いくら国が新卒扱いをするように指導していても、やはり既卒者や第二新卒者よりも新卒者の一括採用が断然有利だということです。
一方、求人広告に応募する中途採用の場合、とくに即戦力を求める求人では社会経験や就職経験のない既卒者は不利になりがちです。中途採用では、既卒者よりも第二新卒者の方が有利になる可能性が高いです。募集要項に経験者を限定する場合は応募できませんし、経験者・有資格者優遇が強調されていれば、既卒者の採用率はかなり下がってしまいます。
また、企業によっては既卒にマイナスイメージを抱いているケースがあります。既卒を選んだ理由や事情は様々なはずなのに、一概に努力不足とか積極性に欠けるといった固定観念を持っている企業も少なくありません。
これらが、既卒者の就活が厳しいとされる理由です。ただし、少子化高齢化の状況を考えますと、今後はもっと若い世代の就職環境が改善されるのは間違いありません。また厚生省のデータでは、最近は新卒入社の3割以上が3年以内に離職しているとあり、企業によっては全く若手社員が不足している状況もあります。既卒者は新卒者同様に、今後の日本社会を支える大事な人材であることを知っておいてください。
既卒就活を成功させる秘訣
既卒者の就活では、マイナス評価となりがちな次のポイントをクリアすると採用率を高めることが可能です。
【既卒になった理由を分かりやすく伝える】
冒頭で話した通り、既卒者の方は既卒になった理由の説明が悩みの種になりがちです。ですが、採用試験ではこの点をはっきりさせないと合格させるわけにはいきません。そこで、あらかじめ明快な返答を準備しましょう。包み隠さず、言い訳を挟まず、ありのままの理由を端的に答えるのが最善です。例え自分の評価を下げる内容でも、その時の自分の選択・決断などを的確に表現できる文章を作文しておきましょう。
【希望する職業・職場を決定する】
当たり前のことですが、自分が働きたいと願う会社・職場を絞り込むことは非常に大事です。やる気と自分の可能性をかけてこの仕事を全うしてみたいという気概があれば、その思いは会社側に伝わりますし、会社へ利益をもたらす機動力となります。適当に就職先を選ぶのではなく、卒業して数年間の充電期間を経て、心からこの会社で働く決心をしたという前向きな気持ちをアピールしましょう。
なお、既卒者を積極的に採用している企業(大手や成長企業)を入念に下調べして、その中から自分がやってみたい職業・やり遂げられると見込んだ会社を探すことも成功の秘訣です。
【自己分析と積極的なアピール】
社会人未経験者ということで、実際に何ができるのか、どういった仕事に能力が発揮できるのかを客観的に判断するのは難しいかもしれません。ですが、採用試験の面接では自分の売りをアピールしなければ良い評価を得られません。そこで、就活サイトなどに登録して、プロのコンサルタントと自己分析やアピールポイントの絞り込みを行ってください。もちろん、就職先のアドバイスなどトータルでサポートしてもらえば採用率がアップするはずです。
まとめ
既卒者であることは、今の働き化が多様な社会では大きなデメリットではありません。もちろん、マッチング次第では惨敗するリスクがあります。ちょっとスタートが遅くなったことをマイナス要素にしないように、むしろじっくりと構えて、満を持して社会デビューする有望な人材であるとのアピールを心がけていきましょう。そのためには既卒者の就活サポートに実績のある就活サイトを利用して、失敗のないように丁寧に就活に励んでみてください。
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