[最終更新日]2023年9月29日 [記事公開日]2021年6月30日
早期離職はデメリットばかりじゃない?早期離職の判断基準と向き合い方
早期離職とは、新卒で初めて就職した会社を早い段階で退職することを指す言葉です。はっきりとした定義はありませんが、おおよそ新卒入社3年以内に退職するケースを想定しています。日本の会社ではよく「石の上にも3年」と言われ、仕事が辛くても3年は続けるようにと教えられてきました。それができない人は我慢が足りないとされて、ネガティヴなレッテルを貼られることが多かったのです。では、本当に3年以内に新卒で就職した会社を辞めることは悪いことなのでしょうか。
新卒で早期離職をする人は意外と多い
実は現在、入社後3年以内に退職する人の割合は、新卒で就職した人全体の3割以上にものぼります。厚生労働省が発表したデータによると、平成29年3月卒業者のうち、高卒で就職した人の39.5%と大卒で就職した人の32.8%が、入社後3年以内に退職しているのです。この傾向は、2010年のリーマンショック以降ずっと変わらず継続しています。つまりはこの10年以上、高卒で約4割、大卒で約3割の人が早期離職しているというのが実情です。
どうしてそれだけ多くの人が早期に退職してしまうのでしょう。労働政策研究・研修機構が発表した早期離職の理由についてのデータでは、「仕事が自分に合わない」「人間関係がよくなかった」、あるいは賃金を含めて「労働条件がよくなかった」といった理由が大きな割合を占めています。
仕事内容にミスマッチを感じていると、自ずとモチベーションが下がってパフォーマンスが悪くなっていきます。その結果、周囲からの評価が下がって、さらにモチベーションが失われるという悪循環に陥りがちです。人間関係や労働条件がよくない環境で働いている場合、もっと深刻な状況に陥る可能性があります。パワハラやオーバーワークによって心身の健康を害し、退職してもしばらくは休養せざるを得ないという人も多いでしょう。
こうした理由を挙げる全ての人が、それだけ追い込まれた結果の退職と断定することはできません。仕事内容が合わないと感じた場合、仕事の面白味が分かるまで続けてみるというのも一つの選択肢でしょう。ですが、ブラック企業の存在やうつ病による休職・退職が長年取り沙汰される中で、そうした社会の問題が若い人たちも苦しめているということは間違いありません。
早期離職するメリットとデメリット
一般的に、早期離職は転職活動のときに人事担当者の心象が悪くなるというデメリットが指摘されています。早期離職した人が面接で必ずといっていいほど聞かれるのは、なぜ前の会社を短期間で辞めてしまったのか、その理由です。面接担当者はこの質問によって、応募者が入社後にまたすぐ退職してしまうような人物なのかどうかを見極めようとしています。入社して数年で退職した場合、前述のような人間関係や労働条件、仕事内容に関する不満をそのまま述べると、残念ながら著しく低い評価をつけられてしまうでしょう。
けれども、早期離職はデメリットばかりではありません。実際のところ、労働政策研究・研修機構のデータにより、3年以内に退職した人のほうが、長く勤めてから転職する人よりも、正社員として再就職できる割合が高くなるという傾向が明らかになったのです。例外的に、高卒の男性に関しては退職の時期が早いほど正社員での再就職の割合は低くなりますが、短大・専門卒以上の男性と女性全般は、早く退職するほど安定した正規雇用の仕事が得られるということになります。
これは、2010年に厚生労働省が「3年以内の既卒者には新卒の採用枠を適用すること」という方針を出したこととも関係します。この流れから、いわゆる第二新卒の転職市場は活発化し、新卒で入社後3年以内に転職活動をするときには、多くの魅力的な求人から選択することができるようになりました。
企業側も、第二新卒の人たちを単にすぐ辞めてしまう人物としてではなく、基本の社会人スキルを備えながらも、これからキャリア形成をしていける有益な人材として見るようになりました。面接で退職の理由について聞かれて、よりスキルアップが目指せる仕事を望んだというような前向きな返答ができれば、面接官の印象もぐっと良くなるでしょう。
かつて、新卒での就職は人生でたった一度のチャンスだと言われていました。それが、現在では学校を卒業してから3年以内であれば、新卒に近い条件で転職ができるようになったのです。スキルや実績がシビアに求められる中途採用全体の転職市場で勝負するよりも、早めの退職によって第二新卒の肩書で転職活動をするほうが有利という考え方もあるでしょう。
早期離職を選択すべきかどうかを決める基準
退職するかどうかの決断は、どの時期においても難しいものです。特に、第二新卒として再スタートできるチャンスは入社後3年以内という期限がありますから、このまま留まるべきか、転職に賭けるべきなのか、悩ましい問題です。転職の経験が無い人は、特にその判断基準に迷うことでしょう。
前述のような人間関係の悩みや労働条件の不満、あるいは業種や職種のミスマッチを感じているのであれば、退職は決して間違った選択とは言えません。なぜなら、これらの問題は自分一人の力で解決することが非常に難しいからです。
賃金や勤務時間について、事前に面接などで聞いていた話と違ったというトラブルはよく聞かれます。これは企業側の説明不足によることもあれば、応募者が正しく理解できていなかったというパターンもあるでしょう。また、事前に得られる情報を正しく理解して入社した場合でも、配属先の人間関係に悩んだり、実際にやってみたらその仕事内容が自分には合わなかったりという問題は、誰にでも起こり得ることです。
いざそのような事態になったとき、入社したばかりの社員が状況を改善しようとしても、すぐに成果は得られません。上司や人事に配置換えなどを相談しても、新入社員の要望にすぐに対応してくれる柔軟な企業がどれだけ存在するでしょうか。結果として、こうしたミスマッチによる弊害は全て社員の側が引き受けることになるのです。
日本企業には長く終身雇用・年功序列という風土がありました。ですから、このように入社まもなくは不利益を被ることになっても、我慢して勤続年数をのばしていけば半自動的に役職が上がっていきましたし、会社は自分と家族の生活を保障してくれていました。最終的には社員も納得できる仕組みがあったのです。
しかし、現在はアメリカのように人材も流動化して、終身雇用という概念が崩れつつあります。じっと大人しく耐えていれば会社が守ってくれるという時代はもう終わったと考え、自分が最大限にパフォーマンスを発揮できる環境を自立的に選択していく必要があるでしょう。
そのため、自分の力で環境を変えることは難しいと判断したときは、いち早く新しい仕事を得られるよう、動き出すべきです。特に、新卒入社後の3年以内であれば第二新卒として転職活動ができるのですから、そのチャンスをフルに活用しましょう。
女性の場合には、別の判断基準が存在します。転職の時期が後になるほどに、妊娠や出産といったライフイベントとの兼ね合いが難しくなってくるということです。実際問題として、就職してすぐに産休や育休は取りにくいということを考えると、1日でも早く正社員として再スタートするほうが今後の選択肢が増えることになります。
転職を決めた時に覚悟すべきことと成功法
在職中にスムーズに転職活動ができて、自分の希望どおりの仕事に就職することができた人は幸運です。しかし、多くの人が現在の環境で追い込まれて、転職活動をする余裕もないまま、やむなく退職してしまいます。そして、とりあえずは非正規雇用の仕事に就く、あるいは仕事の無いままで新しい仕事を探すことになります。
このときに一つ気をつけなくてはならないのは、求職中の立場だという不安や孤独感のせいで正常な判断力を失ってしまうことです。早く次の仕事を決めなくてはという焦りから、ちゃんと情報収集をせずに、目についた求人にとにかく応募していくというのは非常に危うい状態です。これでは、せっかく卒業後3年以内という有利な条件で再就職しても、何らかのミスマッチが起こって再び退職を考えるようになる可能性が高いでしょう。
転職を決意して退職することになったときには、自分自身が置かれた状況と正しく向き合う覚悟が必要です。むやみに焦って次の仕事を探しても、良い結果は得られません。どうして自分は退職するのか、新しい仕事には何を望むのかといった問題をきちんと整理して、次こそ自分が最大限のパフォーマンスを発揮できる仕事を得るのだという強い意志を持ちましょう。
求職中であるということに引け目を感じることはありません。新卒入社でのミスマッチは誰にでも起こり得ることです。むしろ、有利な状況で転職できるうちに退職したという自分の判断に自信を持ちましょう。周りの言うことに惑わされることなく、自分自身の目標を見失わないことが重要です。
そうはいっても、いざ正規の仕事についていない状況になると、どうしても不安がつきまといます。人は不安や焦りといった感情に飲み込まれそうになるとき、他人から励まされることで冷静さを取り戻すことができます。また、転職における自分との向き合い方について、経験のある人からのアドバイスは非常に有益なものです。ですが、求職中はどうしても家族や友人に悩みを打ち明けづらく、自分一人で抱え込もうとして孤独に陥っていく人が多いのではないでしょうか。
このような事態を避けるために、転職エージェントなどを利用して、積極的に第三者からのサポートを受けるようにしましょう。転職エージェントは求職者が無料で利用できる、転職支援のサービスです。登録すると、多くの場合は専任のコンサルタントかアドバイザーがついてくれて、二人三脚で転職活動に臨むことができます。
希望の条件や不安に思っていることなど、誰かと話し合うことで、自分自身も冷静に考えることができるようになるものです。アドバイザーは転職業界のプロとして、求職者を客観的に見て的確なアドバイスもしてくれます。アドバイザーのほうから条件に合った求人を持ってきてくれるという安心感もあり、それだけで心の余裕を持つことができます。
新卒で入社して数年以内に退職する人の場合、多くは初めての転職活動を経験することでしょう。新卒就職であればある程度決まった型があり、黙っていても周りが色々と教えてくれました。それが転職となると、内定までの道筋を自分で探っていかなくてはなりません。全く経験も知識も無い中で、どうするべきか迷いながら活動している人は少なくないはずです。
ですが、転職においても、ちゃんとその道のプロが導いてくれる道筋というものはあります。今、第二新卒の転職市場は活発化していて、転職エージェントのキャリアアドバイザーたちは確実にそのノウハウを持っているのです。自分の条件で応募できる会社はどれくらいあるのか、どのような条件の会社が働きやすいのか、面接では何をアピールすればいいのか、プロに頼れるところはどんどん頼りましょう。大切なことは、あなたが心にゆとりを持って、最終的に自分の希望に合った会社を見極める冷静さを保っていることなのです。
まとめ
早期離職について、日本では長い間ネガティブなイメージがつきまとっていました。職場の上司や親世代の人から否定的な言い方をされて、入社してすぐに会社を辞める勇気が出なかったという人も多くいます。実際に辞めてしまってから自己嫌悪に陥ってしまった人もいるでしょう。そうした若い人たちは、仕事や会社との向き合い方も分からないままに退職してしまったという負い目を感じています。
自身の力で環境を変えることができない場合、退職という道を選ぶのは悪いことではありません。むしろ実際に社会に出てみて、より深く自分自身を分析した結果の正しい選択ということもできます。今、第二新卒の人たちには追い風が吹いています。必要以上のプレッシャーで自分を追い込まないようにして、もっと活躍できる環境を目指し、自信を持って転職活動に臨みましょう。
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